米国政府が実施している高関税措置(いわゆる「トランプ関税」)が、タイの輸出産業に深刻な影響をもたらしていることが複数の調査で明らかになっている。タイ工業連合会(FTI)は2000億バーツ(約8400億円)を超える輸出損失が見込まれると試算しており、産業界は生産・輸出計画の抜本的な見直しを迫られている。
タイは米国から約36%の相互関税を課せられており、ASEAN諸国の中でもベトナム・カンボジアと並んで高い税率が適用されている。特に打撃が大きいのは自動車・部品(対米輸出額約15億ドル)、タイヤ(約35億ドル)、電子部品(HDD・PCB・ICなど)の3分野で、すでに複数の自動車メーカーが対米輸出の一時停止を決定している。
タイ中央銀行(BOT)のシミュレーションによれば、現行関税が維持された場合、GDP成長率が最大0.5ポイント下押しされる可能性がある。一方で中国からの生産移転先としてタイを選ぶ企業も増えており、BOI(タイ投資委員会)の「ファストパス」制度を通じた外資申請が急増、2026年1月だけで300億バーツ以上の外資が申請されたとされる。
経済界からは、政府に対して米国との関税交渉の加速と国内産業支援策の拡充を求める声が高まっている。アヌティン政権はUSAASEAN経済対話への参加を通じ、米国との二国間交渉ルートの確保を模索している。