タイ中央銀行(BOT)は、2026年2月に実施した0.25%の追加利下げを経て、現在、政策金利を過去最低水準に近い年1.00%で維持している。中東情勢の緊迫化に伴う原油高や物流コストの上昇が国内物価を押し上げているものの、中銀は「当面は現在の緩和的な金融水準を維持する」との姿勢を鮮明にしている。
背景にあるのは、コストプッシュ型のインフレに対して利上げで対抗することの副作用への警戒だ。タイ経済は、観光業の回復鈍化や輸出の停滞により、2026年の成長率予測が1%台半ばまで下方修正されるなど、厳しい局面にある。家計債務がGDP比で依然として高水準にあるなか、利上げに踏み切れば中小企業や個人消費に致命的な打撃を与える恐れがある。
ウィタイ総裁は先週、報道陣に対し「エネルギー価格に起因する物価高に対して、金利操作は有効な解決策ではない」と述べ、供給側の問題によるインフレは「静観(Look through)」する方針を示唆した。市場の焦点は、4月29日に予定されている次回の金融政策委員会(MPC)に移っているが、多くの専門家は据え置きを予想している。政府による燃料価格の直接支援策と合わせ、中銀は「低金利による下支え」を継続することで、スタグフレーションのリスクを回避しつつ景気の底割れを防ぐ粘り強い舵取りを迫られている。