タイ政府は国内の石油備蓄の積み増しを急いでいる。エネルギー省がこのほど明らかにしたところによると、最新の原油備蓄量は国内消費の約109日分に達した。中東情勢の緊迫化に伴う供給途絶リスクに備え、従来の約60日分から大幅に引き上げた。ロシアやアフリカなど調達先の多角化も進め、エネルギー安全保障の強化を急ぐ。
ピラパン・サリーラッタウィパック副首相兼エネルギー相が方針を示した。背景には、タイの原油輸入の約5割を占める中東地域での緊張がある。ホルムズ海峡の封鎖リスクが意識されるなか、政府は石油販売業者に対し、法定備蓄率の引き上げを検討するよう要請。民間在庫と洋上の輸送在庫、さらに確定済みの発注分を合わせ、実質的な供給能力を「100日超」の安全水準まで高めた格好だ。
供給網の「脱中東」も鮮明にしている。タイ外務省は、供給源を多角化するためロシアからの原油調達に向けた協議を開始した。これに加え、ブラジルやナイジェリア、カザフスタンなどからの輸入拡大も視野に入れる。
一方、高止まりするエネルギー価格への対応は財政の重荷となっている。政府は石油基金を活用してディーゼル燃料などの小売価格を抑制しているが、同基金の赤字額は約590億バーツ(約2500億円)規模に膨らんでいる。
政府は今後、戦略的な備蓄維持と、補助金政策による財政負担の適正化という難しい舵取りを迫られる。4月からは「タイ・ヘルプス・タイ」と銘打った生活支援策を本格化させる方針で、エネルギー価格の激変緩和措置と構造改革を並行して進める構えだ。