タイの外国人労働者、38万人が就労許可更新を失敗 人手不足で企業が悲鳴

タイの製造業・建設業が深刻な人材危機に直面している。タイ労働省の最新データによると、タイ国内で働く外国人労働者のうち約38万8000人が就労許可証の更新を行っていないことが判明。さらにカンボジア政府の強制送還措置の影響が重なり、現場の人手不足は一段と深刻化している。

「工場が回らない」——製造業現場の悲鳴

タイ東部経済回廊(EEC)を中心とする工業地帯では、ミャンマーやカンボジア出身の労働者が製造ラインや梱包作業を担う主力として機能してきた。しかし近年の煩雑な更新手続きや手数料の増加、さらにミャンマー国内の紛争激化による移動困難などが重なり、正規の手続きを踏まずに働く「不法就労」状態になるケースや、そもそも帰国してしまうケースが急増している。ある自動車部品メーカーの工場長は「ラインの3割が人手不足の状態だ。代わりに国内人材を採用しようとしても、若いタイ人は工場勤務を敬遠する。完全自動化するには設備投資の時間が必要で、今すぐの解決策がない」と頭を抱える。

高齢化と少子化が拍車をかける構造的問題

問題の背景には、タイ社会そのものの構造変化がある。出生率の低下により若年労働力が減少する一方、2036年には「超高齢社会」への突入が見込まれている。製造業、農業、建設業といった肉体労働を要する分野では、国内人材だけでは到底需要をまかなえない状況だ。タイ中小企業振興局によると、中小製造業の約40%がすでに「深刻な人手不足」を訴えており、生産能力が十全に発揮できていないという。「外国人労働者なしには、タイの製造業は成り立たない」というのが業界の偽らざる本音だ。

政府の対応は追いついていない

タイ政府は外国人労働者の受け入れ手続き簡素化や一括更新制度の導入を検討しているが、具体的な進展は遅い。専門家は「短期的な対症療法ではなく、デジタル化・自動化への投資と、労働市場の中長期的なリデザインが不可欠」と指摘する。外国人労働者38万人の「空白」は、タイ経済の競争力に直結する問題だ。

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