
タイの配車アプリ大手ボルト(Bolt)の事業運営証明書が5月31日に満期を迎えるが、陸運局(DLT)と電子・産業省(DES)はその更新を認めない方針を固めた。4月29日に発表されたこの決定は、タイの配車アプリ業界に大きな衝撃を与えている。
「女子高生事件」が引き金に
免許不更新決定の直接的な引き金となったのは、4月23日にバンコクで起きた事件だ。女性乗客がボルトのドライバーに自宅で降ろしてもらえず、走行中の車から飛び降りるという「決死の脱出劇」が発生。
調査の結果、このドライバーは、①ボルトのサービス提供資格を持たない無資格者であり、②公共輸送用の運転免許を保有しておらず、③他人のアカウントを使って運行していた——という三重の問題が発覚した。「幽霊ドライバー」と呼ばれるこの問題は以前から指摘されていたにもかかわらず、会社側の対応が不十分だったとDLTは判断した。
2193件という「証拠」
DLTの調査によると、2026年1月以降だけでボルト関連の法的案件が2193件に上ることが明らかになった。
DLTはかねてからボルトに対して「90日以内にドライバー採用・審査プロセスを改善しなければ許可を更新しない」と警告していたが、期限内に十分な改善が見られなかったと判断した。
ボルト側の主張——「4万人削除・AI導入済み」
ボルトのタイ事務所ゼネラルマネジャーは、「これまでに規則違反のドライバー4万人をシステムから削除し、AIを活用したリアルタイム追跡・警察直通緊急通報機能も導入した」と反論。同社は引き続き事業継続を模索しており、行政との交渉も続けているとされる。
タイ配車市場への影響
タイの配車市場では現在、グラブ(Grab)・ボルト・LINE MANの三つ巴の競争が続いてきた。ボルトが退場すれば、グラブとLINE MANへの顧客・ドライバー流出が起きるとみられ、業界再編の可能性もある。
「厳格な基準を満たせない企業は退場すべき」とする消費者の声も根強く、安全規制の強化は歓迎される側面もある。タイの配車市場は今、新たな局面を迎えようとしている。