1. はじめに:なぜ今、節税を考えるべきか

タイに駐在・移住して働く日本人の数は年々増加しており、バンコクをはじめとするタイ各都市には数万人規模の日本人コミュニティが形成されています。しかし、タイでの確定申告や節税対策についての知識を持たないまま、毎年多くの税金を「払いすぎている」ケースが少なくありません。

タイの個人所得税は最高税率35%の累進課税です。適切な控除を活用すれば、合法的に数万〜数十万バーツの節税が可能です。特に2025年分(2026年申告)は制度の変更点が多く、SSF(スーパーセービングファンド)の廃止やThai ESGXの新設など、知らないと損をする変化が起きています。

📅 2025年分(2026年申告)の確定申告期限

紙申告:2026年3月31日まで

e-Filing(電子申告):2026年4月8日まで(延長)

タイ歳入局(Revenue Department)のD-MyTaxシステムからオンライン申告可能です。

本記事では、タイ個人所得税の基礎から2025年分の最新控除情報、そして実際の節税シミュレーションまでを網羅的に解説します。特にRMF・Thai ESG・Thai ESGXなどの投資系控除は節税効果が高く、ぜひ活用してください。

2. タイ個人所得税の基礎知識

課税対象者:居住者と非居住者

タイの個人所得税は、タイ居住者と非居住者で課税範囲が異なります。

区分 条件 課税対象所得
居住者(Resident) 暦年(1月〜12月)を通じてタイに180日以上滞在 タイ国内源泉所得 + タイに送金した海外所得(2024年以降)
非居住者(Non-Resident) タイ滞在が180日未満 タイ国内源泉所得のみ
⚠️ 2024年以降の海外所得課税ルール変更

2024年1月1日以降、タイ居住者が海外で得た所得をタイに持ち込んだ(送金した)場合、その金額がタイ個人所得税の課税対象となりました(所得を得た年と同年または翌年以降の持ち込み分に適用)。

日本の銀行口座からタイの口座へ送金している場合、その資金の性質(所得か、過去の貯蓄か)を証明できるよう、記録を残しておくことが重要です。

なお、本記事で解説する各種控除の多くはタイ居住者(180日以上滞在者)に適用されるものです。配偶者・子供・親に関する控除は、タイ非居住者の場合、それらの家族がタイ居住者であることが条件となります。

税率表(2025年分・累進課税)

タイの個人所得税は8段階の累進税率を採用しています。以下の税率は各種控除を差し引いた後の課税所得(純所得)に適用されます。

課税所得(THB) 税率 当該ブラケットの最大税額(THB)
0 〜 150,000 非課税(0%) 0
150,001 〜 300,000 5% 7,500
300,001 〜 500,000 10% 20,000
500,001 〜 750,000 15% 37,500
750,001 〜 1,000,000 20% 50,000
1,000,001 〜 2,000,000 25% 250,000
2,000,001 〜 5,000,000 30% 900,000
5,000,001 以上 35%

累進課税なので、例えば課税所得が600,000 THBの場合、全額に15%がかかるのではなく、各ブラケットに対してそれぞれの税率が適用されます(0%+5%+10%+15%と段階的に計算)。

税額計算の仕組み

タイ個人所得税の計算は大きく3ステップです。

ステップ 内容
① 課税所得の算出 総所得 − 給与所得控除(50%・上限10万THB)
② 控除の適用 ①の金額から各種控除(人的控除・保険料・投資控除等)を差し引く
③ 税率の適用 ②で算出した純課税所得に累進税率を適用して税額を計算
💡 節税の本質

節税とは②のステップで差し引く控除額を合法的に最大化することです。控除が多いほど純課税所得が下がり、より低い税率のブラケットに収まります。特に課税所得が高いほど、1THBの控除がより大きな節税効果を生みます。

3. 控除項目の基礎知識(2025年分)

以下に2025年分(2026年申告)の主要控除項目を詳しく解説します。控除には「所得控除」と「人的控除(人的免除)」があり、いずれも課税所得から差し引くことができます。

給与所得控除(Employment Expense Deduction)

給与・賃金所得者は、実際の経費に関わらず給与総額の50%・上限100,000 THBを一律に控除できます。これは自動的に適用されるため、申告書に記載するだけでOKです。

控除の種類 控除額 備考
給与所得控除(標準控除) 給与の50%(上限 100,000 THB 給与200,000 THB以上の場合は一律100,000 THBが控除される

人的控除(Personal Allowances)

自分自身や家族の状況に応じた控除です。領収書等は不要で、確定申告書に情報を記入するだけで適用されます。

控除の種類 控除額(THB) 条件・注意点
本人控除 60,000 納税者本人。常に適用。
配偶者控除 60,000 配偶者に所得がない場合、または配偶者が独立して申告しない場合。同年中を通じて婚姻関係が継続していること。
子供控除(1人目) 30,000 扶養する子供1人につき。子供が20歳未満、または25歳未満かつ在学中であること。
子供控除(2人目以降・2018年以降生まれ) 30,000 追加 2018年以降に生まれた2人目以降の子供は1人あたり追加で30,000 THBの控除が受けられる(合計60,000 THB/人)。
両親扶養控除 30,000
(1親につき)
納税者の親または配偶者の親を扶養する場合。対象の親が60歳以上で年間所得が30,000 THB以下であること。最大4名(両家の父母)まで適用可能 → 最大 120,000 THB
障害者・要介護者扶養控除 60,000 障害または要介護状態の家族1人につき。家族以外の障害者を扶養する場合も60,000 THBが上限(合算)。

保険料控除(Insurance Premium Deductions)

タイ国内の保険会社との契約に限り、各種保険料が控除の対象となります。日本の保険会社との契約は対象外です。

控除の種類 上限額(THB) 条件
生命保険料(本人) 100,000 タイ国内の保険会社。契約期間10年以上。年間リターンが保険料の20%超の場合は控除不可。
健康保険料(本人) 25,000 タイ国内の生保・損保会社。ただし生命保険料との合算上限は100,000 THB
年金型生命保険料(本人) 200,000(所得の15%以内) タイ国内の保険会社の適格年金保険。RMF・プロビデントファンド等との合算500,000 THBの上限あり
生命保険料(収入のない配偶者) 10,000 婚姻状態が当該年を通じて継続していること。
健康保険料(本人の親・配偶者の親) 15,000 タイ国内の保険会社。親1名あたりの上限ではなく合計額の上限。
⚠️ 生命保険 + 健康保険の合算上限に注意

本人の生命保険料と健康保険料の合算上限は100,000 THBです。例えば生命保険料80,000 THB + 健康保険料25,000 THB = 105,000 THB を支払っていても、控除できるのは最大100,000 THBとなります。

社会保険料控除(Social Security Fund)

タイの社会保険(Social Security Fund / SSF)に加入している場合、支払った社会保険料全額が控除対象となります。2025年の社会保険料率は給与の5%(上限:月15,000 THBの給与に対して月750 THB)で、年間最大9,000 THB程度が控除されます。

💡 日本からの派遣社員の場合

日本の社会保険を継続して支払いながらタイで勤務する場合、タイの社会保険に加入していないケースがあります。その場合はこの控除は適用されませんが、日タイ社会保障協定により二重加入を避けることが可能です。

住宅ローン利子控除(Mortgage Interest)

タイ国内の不動産(居住用)の購入・建設のために組んだ住宅ローンの支払利子は、年間最大100,000 THBまで控除できます。タイにコンドミニアム等を購入している方は忘れずに申告しましょう。

寄付控除(Charitable Contributions)

教育機関・病院・宗教施設・認定慈善団体への寄付金は、全控除後の純所得の10%以内で控除できます。教育支援・国立病院への寄付は控除額が2倍になる特例(ただし合計10%以内)があります。

⚠️ 2026年1月以降はe-Donationシステム経由が必須

2026年1月1日以降、政府指定の病院・教育機関以外への寄付控除を受けるためには、タイ歳入局のe-Donationシステム経由で行う必要があります。現金や振込による寄付では控除が認められなくなりました。

2025年分の新設・変更控除

🏖️ タイ国内旅行控除(2025年:30,000 THB)

観光振興を目的とした特別控除で、タイ国内の宿泊施設・観光施設への支出に対して最大30,000 THBの控除が受けられます(2024年分は15,000 THBでした)。適格な宿泊施設からのe-Taxインボイス等が必要です。2026年分の条件については歳入局の発表を待つ必要があります。

🎨 芸術品購入控除(2025年新設)

2025年〜2027年の期間、認定アーティストの芸術品を購入した際の費用が控除対象として新設されました。対象は「National Artist」「Silapatorn Artist」またはOCAC(文化芸術局)に登録されたアーティストの作品で、TaxインボイスとTax Invoiceが必要です。

4. 投資系控除(節税の最大のカギ)

タイの節税で最も効果的なのが、投資系の控除です。RMFやThai ESG・Thai ESGXを活用することで、数十万バーツ規模の控除が可能です。これらは「老後資産の形成」と「節税」を同時に実現できる一石二鳥の制度です。

🏦
RMF(退職投資信託)
500,000 THB(上限)
課税所得の30%以内。年金保険等との合算上限あり。
🌿
Thai ESGファンド(特別期間)
300,000 THB(上限)
2024〜2026年の特別枠。課税所得の30%以内。5年保有。
♻️
Thai ESGX(新規投資枠)
300,000 THB(上限)
2025年5〜6月に購入分。課税所得の30%以内。5年保有。Thai ESGとは別枠。
🔄
Thai ESGX(LTF転換枠)
300,000 THB(2025年初年度上限)
LTF保有分をThai ESGXに転換。5年で最大500,000 THBを分散控除。
SSF(スーパーセービングファンド)
廃止 (2025年分から)
2025年分の所得から控除項目から除外。既存の保有は継続可。

RMF(退職投資信託 / Retirement Mutual Fund)

RMFは老後資金の形成を目的とした投資信託で、個人の節税ツールとして最もポピュラーな制度です。タイ国籍を問わず、タイの税居住者であれば誰でも加入できます。

項目 内容
控除額 課税所得(給与所得控除後)の30%以内、かつ最大500,000 THB
最低購入額 特に設定なし(1バーツからでも可)。ただし年に最低1回は購入が必要
解約条件 55歳以上かつ投資期間5年以上(購入から5年経過)で解約可能
途中解約のペナルティ 条件を満たさずに解約した場合、過去5年分の控除額に相当する税金 + 延滞税(1.5%/月)が追徴される
合算上限 年金保険・プロビデントファンド等との合算500,000 THBの上限が適用
売却益 55歳以上・5年以上保有後の解約で得た利益は非課税
✅ RMFの実務ポイント

RMFは毎年購入する義務があります(購入額の制限はなく、少額でもOK)。1年でも購入しない場合はペナルティが発生するため、年末にまとめて購入する方も多いです。タイ大手銀行(SCB、Kasikorn、Bangkok Bank等)やオンライン証券で購入可能。株式型・債券型・バランス型など多様なファンドから選べます。

Thai ESGファンド(Thai Environmental, Social and Governance Fund)

ESG投資(環境・社会・ガバナンス)を促進するために設けられたファンドです。通常のThai ESGとは別に、2024〜2026年の特別期間は大幅に有利な条件が適用されています。

期間 控除上限 保有期間 備考
通常期間
(2027年以降)
100,000 THB
(所得の30%以内)
8年以上 2023年11月21日〜2032年12月31日の期間内購入分
特別期間
(2024〜2026年)
300,000 THB
(所得の30%以内)
5年以上 2024〜2026年購入分のみ。上限が3倍、保有期間が短縮される大幅優遇。

Thai ESGの控除は、RMFや年金保険などの500,000 THBの合算上限の対象外です。つまりRMFとは完全に独立した別枠の控除として利用できます。これが最大の魅力です。

Thai ESGXファンド(2025年新設)

2025年から新たに設けられたThai ESG Extra Fund(Thai ESGX)は、主に旧LTF(長期株式投資信託)保有者向けの制度ですが、一般の新規投資枠も存在します。

① 新規投資枠(購入期間:2025年5月2日〜6月30日)

項目 内容
控除上限 課税所得の30%以内、かつ最大300,000 THB
購入可能期間 2025年5月2日〜2025年6月30日
保有条件 購入日から5年以上保有
Thai ESGとの関係 Thai ESGとは完全に別枠。合算せずにそれぞれ300,000 THBまで控除可能。
売却益 5年以上保有後の売却益は非課税

② LTF転換枠(2025年5月13日〜6月30日)

2025年3月11日時点でLTFを保有していた場合、全LTFユニットをThai ESGXに転換することで、5年にわたり最大500,000 THBの控除を受けることができます。

年度 控除可能額
2025年(初年度) 最大 300,000 THB
2026年〜2029年(2〜5年目) 残額を均等分割、各年最大 50,000 THB
合計 最大 500,000 THB(5年間)
📌 Thai ESGXの購入期間は既に終了しています

Thai ESGXの購入・LTF転換は2025年6月30日までが対象期間でした。2026年以降に新規購入してもThai ESGXの控除は受けられません。ただし、2025年に購入・転換済みの方は2026年以降の分散控除(LTF転換枠の2〜5年目分)が継続して適用されます。

SSF(スーパーセービングファンド)の廃止

2020年に導入されたSSF(Super Savings Fund)は、2025年分の所得から控除項目より除外されました。これまでSSFは最大200,000 THB(所得の30%以内)・10年保有という条件で人気を集めていましたが、2025年以降の新規購入分は控除対象外となります。

⚠️ 既存SSF保有者は解約条件に注意

SSFの控除制度は廃止されましたが、既存の保有ユニットは引き続き保有可能です。ただし、SSFは購入から10年以上保有しないと解約時にペナルティが発生します。早期解約は避け、引き続き保有を継続することを推奨します。過去に控除を受けた分の追徴課税リスクについては税理士に確認してください。

500,000 THBの合算上限ルール(重要!)

以下の控除は合算して年間500,000 THBを超えることができません。この「上限の壁」を理解していないと、払い込んでも控除できないケースが生じます。

合算対象の控除(いずれも上限500,000 THBの枠内)
RMF(退職投資信託)への拠出額
年金型生命保険料(Pension Life Insurance)
会社のプロビデントファンド(PVD)への拠出額
公務員年金基金(Government Pension Fund)
私立学校教職員互助基金
国民貯蓄基金(National Savings Fund)への拠出額
✅ 500,000 THB上限の対象外(独立した別枠)

Thai ESGファンドThai ESGXファンドは、上記の500,000 THB合算上限の対象外です。RMFをフル活用した上で、さらにThai ESG・Thai ESGXを利用することで、投資系控除の合計を大幅に増やすことができます。

5. 2025年分の主な変更点まとめ

変更内容 2024年分(旧) 2025年分(新)
SSF控除 最大200,000 THB(所得の30%) 廃止
Thai ESGX なし 新設(新規枠・LTF転換枠ともに最大300,000 THB)
国内旅行控除 15,000 THB 30,000 THB(2倍に増額)
芸術品購入控除 なし 新設(2025〜2027年)
e-Donation義務化 一部のみ 2026年1月以降、寄付控除にはe-Donation経由が必須

6. 応用・実践編:節税シミュレーション

それでは実際にどれくらいの節税効果があるのか、具体的なケースでシミュレーションしてみましょう。以下では「最小限の控除しか使わない場合」と「フル活用した場合」を比較します。

📌 シミュレーションの前提条件

・給与以外の所得はなし(給与所得のみ)
・独身(配偶者・子供なし)
・タイ居住者(180日以上滞在)
・タイの社会保険加入済み(年間9,000 THB拠出)
・1 THBあたり4円換算(参考値)

ケース1:月収10万THBのAさん(年収1,200,000 THB)

バンコクの中堅日系企業に勤める30代前半の独身エンジニア。これまで確定申告を会社任せにしており、節税をほとんど意識していなかった。

📊 現状(最小限の控除のみ)

年間給与収入1,200,000 THB
① 給与所得控除(50%・上限100,000)− 100,000 THB
② 本人控除− 60,000 THB
③ 社会保険料控除− 9,000 THB
課税所得1,031,000 THB
税額計算:0〜150,000(0%)+ 150,001〜300,000(5%)+ 300,001〜500,000(10%)+ 500,001〜750,000(15%)+ 750,001〜1,000,000(20%)+ 1,000,001〜1,031,000(25%)
= 0 + 7,500 + 20,000 + 37,500 + 50,000 + 7,750
⚡ 所得税額122,750 THB

✅ 節税フル活用後

年間給与収入1,200,000 THB
① 給与所得控除− 100,000 THB
② 本人控除− 60,000 THB
③ 社会保険料控除− 9,000 THB
④ 生命保険料(10年以上の保険)− 100,000 THB
⑤ RMF拠出(所得の30%以内)− 330,000 THB
⑥ Thai ESGファンド(特別期間・5年保有)− 300,000 THB
課税所得301,000 THB
税額計算:0〜150,000(0%)+ 150,001〜300,000(5%)+ 300,001〜301,000(10%)
= 0 + 7,500 + 100
⚡ 所得税額7,600 THB
💰 節税効果(年間)115,150 THB(約46万円相当)
💡 ケース1の解説

RMFへ330,000 THB(年収の約27.5%)を拠出し、Thai ESGに300,000 THBを投資することで、税負担が122,750 THBから7,600 THBへと大幅に削減されました。RMFとThai ESGは長期保有が条件ですが、老後資産の形成と節税を同時に実現できる賢い戦略です。

実際に手元から出ていくキャッシュフローを考えると、投資した金額は将来的にリターンがあるため、「出費」というより「資産形成」として捉えるべきです。

ケース2:月収30万THBのBさん(年収3,600,000 THB)

バンコクの日系大手企業に勤める40代の管理職。配偶者(専業主婦)と子供2人(2020年生まれと2022年生まれ)を扶養。タイのコンドミニアムを住宅ローンで購入済み。

📊 現状(最小限の控除のみ)

年間給与収入3,600,000 THB
① 給与所得控除− 100,000 THB
② 本人控除− 60,000 THB
③ 社会保険料控除− 9,000 THB
課税所得3,431,000 THB
税額:0 + 7,500 + 20,000 + 37,500 + 50,000 + 250,000 + 429,300(30% × 1,431,000)
⚡ 所得税額(概算)794,300 THB

✅ 節税フル活用後

年間給与収入3,600,000 THB
① 給与所得控除− 100,000 THB
② 本人控除− 60,000 THB
③ 配偶者控除(収入なし)− 60,000 THB
④ 子供控除(2人・2018年以降生まれ)− 120,000 THB
⑤ 社会保険料控除− 9,000 THB
⑥ 生命保険料(本人)− 100,000 THB
⑦ 健康保険料(健康保険のみ)※生命保険と合算上限のため0
⑧ 住宅ローン利子− 100,000 THB
⑨ RMF(所得の30%・上限500,000)− 500,000 THB
⑩ Thai ESGファンド(特別期間)− 300,000 THB
⑪ Thai ESGXファンド(2025年新規枠・既購入の場合)− 300,000 THB
課税所得1,951,000 THB
税額:0 + 7,500 + 20,000 + 37,500 + 50,000 + 237,750(25% × 951,000)
⚡ 所得税額(概算)352,750 THB
💰 節税効果(年間)441,550 THB(約177万円相当)
💡 ケース2の解説

高所得者ほど1 THBの控除が生む節税効果は大きくなります(30%課税ブラケットなら1THBの控除で0.3 THBの節税)。配偶者・子供の人的控除だけで240,000 THBを確保できており、さらにRMF・Thai ESG・Thai ESGXの投資系控除をフル活用することで、課税所得を約3,431,000 THBから1,951,000 THBまで圧縮できます。

⑩・⑪のThai ESGおよびThai ESGXは5年保有が条件。解約予定がなければ積極的に活用すべき制度です。Thai ESGXの新規購入窓口(2025年5〜6月)は終了していますが、2025年中に購入していた方は引き続き2025年分の控除として申告できます。

節税の優先順位チェックリスト

控除にはそれぞれ条件や縛りがあります。以下の優先順位を参考に、自分の状況に合った節税プランを組み立ててください。

  • 給与所得控除・人的控除を確実に申告する 手続き不要で自動的に適用される控除を「申告し忘れる」ことがないよう確認。特に配偶者・子供・両親の人的控除は漏れがちです。
  • 社会保険料・住宅ローン利子を申告する 証明書類(社会保険証明書、銀行の利子明細等)を取り寄せて確実に申告。コンドミニアムのローン利子控除(最大100,000 THB)は見落とされがちです。
  • 生命保険料・健康保険料を最大活用する タイ国内の保険会社と契約している場合、合算上限100,000 THBまで控除可能。保険の見直しを行い、タイ国内契約に切り替えることも選択肢です。
  • RMFを所得の30%または500,000 THBまでフル活用する 老後資金として長期保有前提の方には最優先。特に高所得者は500,000 THBフルに活用することで大きな節税効果が得られます。
  • Thai ESGファンドを300,000 THBまで活用する(特別期間内) RMFとは独立した別枠。2026年中(2026年分の控除として)に購入しても5年保有条件の優遇が続きます(2026年末まで)。
  • 寄付・旅行・その他の特別控除を活用する タイ国内旅行(2025年分は30,000 THBまで)、寄付(e-Donation必須)など細かい控除も積み上げましょう。

7. 注意点・よくある誤解

「会社が全部やってくれる」は危険

タイでは多くの日系企業が年末調整・確定申告のサポートをしてくれますが、投資系控除(RMF・Thai ESG等)は個人が自己申告しない限り適用されません。会社の経理に「RMFの控除証明書を提出する必要があるか」を必ず確認しましょう。

「日本で確定申告しているから大丈夫」は誤り

タイ居住者(180日以上滞在)であれば、タイでの所得についてはタイでも確定申告が必要です。日本の確定申告(海外在住者向けの確定申告)とタイの確定申告は別物です。日タイ租税条約を確認し、二重課税のリスクを理解しておきましょう。

控除証明書の取得を忘れずに

RMFやThai ESGの控除を受けるためには、ファンド会社(AMC)が発行する控除証明書(หนังสือรับรองการลงทุน)が必要です。毎年1月頃に発行されるため、忘れずに入手してください。近年はe-Tax Invoiceとして電子発行されるケースも増えています。

RMFの「毎年購入義務」を忘れない

RMFは一年でも購入を怠るとペナルティが発生します。金額は問いませんので、少なくとも年1回は購入を行いましょう。年末(12月)に購入しても当年分の控除として認められます。

Thai ESGのリターンは非保証

Thai ESG・Thai ESGXは投資信託です。節税効果はありますが、元本割れのリスクもあります。ファンドの運用成績・コスト(信託報酬)を確認した上で投資判断を行ってください。

🚨 500,000 THBの上限オーバーに注意

会社のプロビデントファンド(PVD)に加入している場合、その拠出額もRMFや年金保険と合算されます。高い拠出率のPVDに加入していると、RMFの控除可能額が思ったより少なくなることがあります。事前に合算額を確認してから拠出額を決定しましょう。

8. まとめ

タイで働く日本人にとって、個人所得税の節税は「知っているか知らないか」だけで年間数十万〜百万バーツ以上の差が生まれます。本記事で解説した主なポイントを以下に整理します。

✅ 2025年分(2026年申告)の節税チェックリスト
  • ✔ 給与所得控除(100,000 THB)を申告しているか
  • ✔ 本人・配偶者・子供・両親の人的控除を漏れなく申告しているか
  • ✔ タイ国内の生命保険・健康保険料を申告しているか(上限100,000 THB)
  • ✔ 住宅ローンの利子控除(上限100,000 THB)を申告しているか
  • ✔ 社会保険料を申告しているか
  • ✔ RMFを最大限活用しているか(上限500,000 THB・合算ルールに注意)
  • ✔ Thai ESGファンドを活用しているか(2026年末まで特別期間中:上限300,000 THB)
  • ✔ Thai ESGX(2025年5〜6月購入済み)の控除申告を忘れていないか
  • ✔ SSF廃止を把握しており、2025年購入分を誤って申告していないか
  • ✔ 国内旅行控除(2025年:30,000 THB)のレシートを保管しているか
  • ✔ 寄付をe-Donationシステム経由で行っているか(2026年分以降)

税制は毎年変更されます。2026年分以降も新たな変更が予定されている可能性があるため、タイ歳入局(Revenue Department)の公式発表や、信頼できる税理士・会計士への相談を定期的に行うことをお勧めします。

日刊タイニュースでは今後も最新の税務情報をわかりやすくお届けします。確定申告シーズン(毎年1〜4月)前に、ぜひ本記事を改めてご確認ください。