タイ社会保険の失業給付を受給する方法
【日本人向け完全ガイド2026年版】
受給条件・給付額の計算・手続きの流れ・外国人ならではの注意点を徹底解説
この記事では、タイ社会保険の失業給付について、受給条件・給付額・申請手続きを日本人向けにわかりやすく解説します。また、退職後に社会保険を任意継続できる「第39条」の制度についても合わせて紹介します。
タイ社会保険の被保険者の区分と失業給付の位置づけ
タイの社会保険法では、被保険者を3つの区分(第33条・第39条・第40条)に分類しています。失業給付を受け取れるのは、このうち第33条被保険者のみです。
| 区分 | 対象者 | 保険料 | 失業給付 |
|---|---|---|---|
| 第33条 | 雇用主に雇われている労働者(外国人含む・強制加入) | 月給の5%(上限875B※) | ✅ 受給可能 |
| 第39条 | 第33条を退職後に任意継続する者 | 月額 432バーツ(定額) | ❌ 受給不可 |
| 第40条 | 自営業者・フリーランス等(任意加入) | 月額 70〜300バーツ(プランによる) | ❌ 受給不可 |
※ 保険料の賃金上限は2026年1月より15,000バーツ→17,500バーツに改正。個人負担の月額上限は750B→875Bへ。
失業給付の受給条件
失業給付を受けるには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
| 条件 | 詳細 |
|---|---|
| ① 加入期間 | 退職前15ヶ月の間に6ヶ月以上の保険料支払い実績があること(連続不要・合算可) |
| ② 失業状態 | 現在、社会保険(第33条)の被保険者でないこと(在職中は申請不可) |
| ③ 失業期間 | 失業期間が8日以上継続していること |
| ④ 申請期限 | 退職日から30日以内に最寄りのSSO事務所または公共職業安定所(Employment Office)で求職者登録を行うこと |
| ⑤ 求職活動 | 積極的に求職活動を行っており、月次の求職報告を提出できること |
| ⑥ 非自己都合の解雇(給付日数の違い) | 給付日数は退職理由によって異なる(下記参照)。ただし自己都合でも受給は可能 |
❌ 受給できないケース
- 🚫懲戒解雇(重大な非違行為による解雇)の場合
- 🚫自ら退職した後に第39条(任意継続)へ切り替えた場合(以後は失業給付対象外)
- 🚫契約期間満了による退職で、特定の条件下にある場合(内容により異なる)
- 🚫在職中(現在も保険料を納付している)の場合
- 🚫退職日から30日を超えて申請した場合
給付額の計算方法とシミュレーション
📊 退職理由別の給付条件
- 給付率:平均月給の60%
- 給付期間:最長180日(約6ヶ月)
- 対象:解雇・倒産・雇用主側の理由による雇用終了
- 受給上限(〜2025年末):9,000バーツ/月
(15,000 × 60% = 9,000) - 受給上限(2026年〜):10,500バーツ/月
(17,500 × 60% = 10,500)
- 給付率:平均月給の30%
- 給付期間:最長90日(約3ヶ月)
- 対象:自主退職・任期満了・双方合意退職等
- 受給上限(〜2025年末):4,500バーツ/月
(15,000 × 30% = 4,500) - 受給上限(2026年〜):5,250バーツ/月
(17,500 × 30% = 5,250)
🔢 給付額の計算方法
【会社都合】平均月給(上限)× 60% × 最長180日
【自己都合】平均月給(上限)× 30% × 最長90日
※「平均月給」は退職直前の実際の月給が計算に使われますが、上限額(15,000バーツ、2026年〜17,500バーツ)を超える部分は計算に含まれません。
📝 シミュレーション①:会社都合退職・月給40,000バーツの場合(2025年末まで)
月額給付 = 15,000 × 60% = 9,000バーツ/月
最長受給期間:180日(約6ヶ月)
📝 シミュレーション②:自己都合退職・月給30,000バーツの場合(2025年末まで)
月額給付 = 15,000 × 30% = 4,500バーツ/月
最長受給期間:90日(約3ヶ月)
📝 シミュレーション③:会社都合退職(2026年以降・賃金上限改定後)
月額給付 = 17,500 × 60% = 10,500バーツ/月
最長受給期間:180日(約6ヶ月)
※ 実際の給付日数は「失業している日数」分のみです。再就職すれば受給は終了します。
申請手続きの流れ
📄 必要書類
- 📘パスポート(原本)+コピー写真ページ・現在のビザページ・最新の入国スタンプページ
- 🪪ワークパーミット(労働許可証)+コピー退職後もコピーを保管しておくこと
- 🏛️社会保険カード(SSカード)+コピー社会保険番号(13桁)が記載されたもの
- 🏦本人名義のタイ銀行口座(通帳またはキャッシュカード)+コピー給付金の振込口座として必要
- 📝失業給付申請書(สปส. 2-01/7)SSO事務所の窓口または公式サイト(www.sso.go.th)から入手
- 📋雇用終了証明書(退職証明書)会社(雇用主)が発行するもの。退職日・退職理由が明記されていることが望ましい
🗓️ 手続きのステップ
最寄りのSSO事務所(社会保険事務所)または公共職業安定所(Employment Office / กรมการจัดหางาน)に出向き、求職者登録(失業給付申請)を行う。この30日という期限が最重要。
オンライン申請も可能(www.sso.go.th のe-Serviceページから)。
申請書類一式を窓口に提出。スタッフが書類を確認し、受付番号が発行される。不備がある場合はここで指摘される。
提出書類に基づいてSSOが審査を実施。加入月数・退職理由・書類の整合性が確認される。
承認されると、指定の銀行口座に月次で給付金が振り込まれる。振込日はSSOから通知される(通常、月初めに翌月分が振り込まれる)。
受給中は毎月1回、求職活動の状況をSSO事務所または公共職業安定所に報告する義務がある。報告を怠ると給付が停止される。
新しい仕事に就いて社会保険(第33条)に再加入した時点で給付は終了。会社都合なら最長180日、自己都合なら最長90日で終了。
📋 受給中の月次報告(求職活動報告)
失業給付を継続して受給するためには、毎月決められた期日に求職活動の報告(出頭または書類提出)が必要です。
| 報告方法 | 内容 |
|---|---|
| 窓口出頭 | SSO事務所または公共職業安定所に直接出向いて報告書を提出する |
| オンライン報告 | SSO公式サイト(www.sso.go.th)のe-Serviceから報告できる場合あり。最新情報はSSOに確認 |
外国人(日本人)が知っておくべき特有の注意点
⚠️ ビザ・ワークパーミットの問題
つまり、失業給付を受けながらタイに滞在し続けるためには、別のビザ(Non-O、観光ビザ等)で在留資格を維持するか、次の雇用主を見つけてビザを更新する必要があります。
| 問題 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| ワークパーミットの返却義務 | 退職後7日以内に労働省(雇用局)に返却義務あり | 退職前から次の雇用先を探し、できるだけ空白期間を短くする |
| Non-Bビザの根拠消滅 | 就労ビザは雇用主の後ろ盾があって初めて有効。退職後は理論上ビザの根拠が失われる | イミグレーションに相談してNon-OビザやTourist Visaに切り替えるか、次の就職先を素早く確保する |
| 失業中の合法的在留 | 失業中もタイに滞在し続けるためには有効な在留資格が必要 | ビザランや国境越えも選択肢の一つだが、弁護士またはビザ専門業者への相談を推奨 |
🗣️ 言語の壁への対処法
SSO事務所の窓口は基本的にタイ語対応です。外国人対応に慣れているスタッフは一部のオフィスに限られます。以下の方法で対処しましょう。
- ✅目的と必要書類を事前にタイ語で書いてメモを準備する(「失業給付を申請したい」= ต้องการขอรับสิทธิประโยชน์กรณีว่างงาน)
- ✅翻訳アプリ(Google翻訳等)をスマートフォンにインストールし、その場でやり取りに活用する
- ✅タイ語が得意な日本人の知人やコンサルタントに同行をお願いする
- ✅日系の社会保険申請代行サービスや人事コンサルタントを活用する
退職後の社会保険任意継続(第39条)について
退職後に健康保険などの社会保険の給付を継続したい場合は、第39条(任意継続)への切り替えが選択肢の一つです。ただし、失業給付は第39条への切り替え後は受け取れなくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入条件 | 第33条として12ヶ月以上保険料を支払っていたこと |
| 申請期限 | 退職後6ヶ月以内にSSO事務所で手続き |
| 月額保険料 | 432バーツ(定額) |
| 受けられる給付 | 傷病給付・出産給付・心身障害給付・死亡給付・育児給付・老齢給付(加入月数に加算される) |
| 受けられない給付 | 失業給付(受給不可) |
2026年法改正による変更点
2025年12月に公布された改正により、社会保険料の算定基礎賃金の上限が段階的に引き上げられます。これにより、失業給付の上限額も増額されます。
| 適用期間 | 賃金上限 | 会社都合の月額上限 | 自己都合の月額上限 |
|---|---|---|---|
| 〜2025年12月31日 | 15,000バーツ | 9,000バーツ(15,000×60%) | 4,500バーツ(15,000×30%) |
| 2026年1月〜2028年12月 改正 | 17,500バーツ | 10,500バーツ(17,500×60%) | 5,250バーツ(17,500×30%) |
| 2029年1月〜2031年12月 | 20,000バーツ | 12,000バーツ | 6,000バーツ |
| 2032年1月〜 | 23,000バーツ | 13,800バーツ | 6,900バーツ |
よくある質問(FAQ)
まとめ
✅ 申請前の確認チェックリスト
- ☐退職前15ヶ月に6ヶ月以上の社会保険(第33条)加入期間がある
- ☐退職証明書(雇用終了証明)を会社に依頼・取得済み
- ☐パスポート・ワークパーミット・社会保険カードのコピーを準備済み
- ☐タイ国内の銀行口座(本人名義)を持っている・維持している
- ☐退職日から30日以内に申請できる日程を確保している
- ☐退職後のビザ・在留資格の維持方法を確認済み(または確認する予定)
- ☐失業給付と任意継続(第39条)のどちらを優先するか検討済み
🏛️ この記事のまとめ
- 失業給付を受けられるのは第33条被保険者(雇用されている労働者)のみ。外国人(日本人)でも条件を満たせば受給可能。
- 受給条件は退職前15ヶ月に6ヶ月以上の加入と退職後30日以内の申請の2点が最重要。
- 給付額は会社都合なら平均月給の60%・最長180日、自己都合なら30%・最長90日。
- 受給中は月次の求職活動報告が必須。怠ると給付が停止される。
- 外国人特有の注意点としてビザ・ワークパーミットの問題がある。退職後のタイ在留資格の維持方法を事前に確認することが重要。
- 第39条(任意継続)に切り替えると失業給付は受けられなくなる。給付期間終了後に検討するのが得策。
- 2026年1月の法改正で賃金上限が17,500バーツに引き上げられ、会社都合の月額上限は9,000→10,500バーツへ増額。