タイ首相、構造改革で「中所得国のわな」脱却へ 施政方針演説

タイのアヌティン・チャーンウィーラクーン首相は9日、国会で内閣発足後初となる施政方針演説に臨んだ。経済構造の抜本的改革による「中所得国のわな」からの脱却を最優先課題に掲げ、行政手続きを簡素化する「スーパーライセンス」導入や、2028年までの経済協力開発機構(OECD)加盟を目指す方針を表明した。中東情勢緊迫化に伴うエネルギー高など、足元の逆風を構造改革の好機に変える構えだ

行政効率化を柱に「10プラス政策」

アヌティン首相が掲げた基本方針は「10プラス政策」と称され、経済、外交・安保、社会、環境、行政改革の5分野を重点領域とした。特に強調したのが、官僚主義によるコスト増の解消だ。

  • 「スーパーライセンス」構想:煩雑な許認可手続きを統合し、180日以内に事業コストを低減する枠組みを構築する。
  • オムニバス法の制定:1年以内に時代遅れの規制を一括して撤廃・修正する包括法を導入し、民間投資を呼び込む。

産業高度化と「全方位外交」

経済成長のエンジンとして、AI(人工知能)や半導体、クリーンエネルギーといった次世代産業への投資優遇を鮮明にした。農業分野では「精密農業」への転換を急ぎ、観光業ではデジタルノマドや長期滞在者の取り込みによる高付加価値化を狙う。

外交面では、国益を最優先する「中道」の全方位外交を継続。2028年までのOECD加盟を目標に据え、国内制度の国際標準化を加速させることで、外資からの信頼回復を狙う。

成長と分配の両立に課題

演説では、家計債務の整理や中小企業支援といった分配施策にも触れたが、具体策には乏しいとの見方もある。景気減速が懸念される中で、規制撤廃などの「痛み」を伴う構造改革と、国民への支援をどう両立させるかが、第2次アヌティン政権の試金石となる。


主要政策の骨子

分野主な施策・目標
経済中所得国のわな脱却、AI・半導体投資促進、精密農業への転換
行政・法規制「スーパーライセンス」導入、不必要な法律の廃止(オムニバス法)
外交・通商2028年までのOECD加盟目標、新興国との連携強化
社会・環境2050年までのネットゼロ達成、教育無償化、シルバーエコノミー
安保4年契約の志願兵制導入、軍の近代化
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