国際的な信用格付け機関ムーディーズ・レーティングスは4月21日、タイの国債格付け見通しを「ネガティブ(否定的)」から「スタビル(安定的)」に引き上げ、長期国債の格付け「Baa1」を維持すると発表した。この改善は、米国との関税摩擦による下振れリスクが後退したことや、国内投資の回復が主な理由とされている。
ムーディーズは、タイ経済の改善要件として「持続的な経済成長軌道の確立」「公的債務の着実な削減」「安定した政治環境に裏打ちされた構造改革の進展」の3点を挙げた。2026年2月の総選挙でアヌティン・チャルンウィラクン率いるプームチャイタイ党(タイ誇り党)が圧勝し、4月6日に連立政権が発足したことで、政治的安定に一定の評価がなされた形だ。
一方、アジア開発銀行(ADB)は2026年のタイ成長率予測を1.6%に据え置いており、ASEAN主要国の中では最も低い水準にある。エネルギー輸入国であるタイは中東危機による燃油高の打撃を受けやすく、家計債務の高さと財政余地の狭さも懸念材料として残っている。格付け見通しの改善は投資家心理を下支えする材料となるが、市場では今後の財政規律と構造改革の実行が格付けアップの条件と見られている。