「ドリアンの王国」タイが、かつてない過剰供給の嵐に直面している。2026年のタイ国内のドリアン生産量は過去最大の約200万トンに達する見通しで、現時点での推計需要871,692トンを大幅に上回る189,616トンの余剰が発生するとみられている。農家の手取り価格は既に1kg当たり200バーツを下回る水準で推移しており、一部農家は生産コストすら回収できない「赤字収穫」に追い込まれている。
問題を一層複雑にしているのが、ベトナム産ドリアンの急増だ。5〜6月にかけてベトナム産が大量に中国市場に流入する見込みで、タイ産ドリアンの価格をさらに押し下げる可能性がある。ベトナム産は品質でやや劣るとされるが、タイ産の半額以下の価格が強力な武器になっている。タイの農業専門家は「このまま放置すれば、今シーズンのドリアン農家の平均収入は前年比30〜40%減になりかねない」と警告する。
タイ政府は対策として7つの緊急措置を発動した。GAP(適正農業規範)認証の迅速化、品質保証の集中管理センター「セット・ゼロ」の設置、輸出促進のための専門作業班の創設、中国との交渉強化のためのワーキンググループ設立などがその柱だ。2026年1〜3月のタイ産生ドリアン輸出は前年比67%増と好調を維持しているが、それも主に品質管理強化の成果であり、今後の需給均衡には課題が残る。
農家の間では「政府に何度も訴えてきたが、構造的な問題は解決されていない」との声が多い。タイのドリアン産業は年間輸出額1500億バーツ規模を誇る農業の要だけに、この危機がどう乗り越えられるかはタイ農業の将来を左右する重大問題だ。