世銀、タイ26年成長率1.3%に下方修正 エネルギー高でASEAN独り負け

世界銀行は8日、東アジア・大洋州地域の経済見通しを発表し、2026年のタイの実質国内総生産(GDP)成長率を1.3%とする予測を明らかにした。昨年10月時点の予測(1.8%)から下方修正した。中東紛争に伴うエネルギー価格の高騰が輸入依存度の高いタイ経済を直撃するほか、高水準の家計債務が個人消費を抑制する。東南アジアの主要国の中で「独り負け」の様相を強めている。

エネルギー高が直撃、消費も力欠く

世銀は、タイの2026年の成長率が前年(2.4%)から大幅に減速するとみている。最大の懸念要因は中東情勢の緊迫化による「エネルギーショック」だ。タイはエネルギーの多くを輸入に頼っており、燃料価格の上昇が家計の購買力を奪い、企業の生産コストを押し上げている。世銀のアディティア・マトゥー・チーフエコノミストは「燃料価格が50%上昇した状態が続けば、地域の家計所得は3〜4%減少する可能性がある」と警鐘を鳴らした。

内需の柱である個人消費も、家計債務の重荷で勢いを欠く。2025年半ば時点で家計債務残高はGDP比86.8%に達しており、銀行の融資厳格化も相まって、自動車や住宅など耐久財の伸び悩みが顕著だ。

「東南アジア最速」の減速、構造改革急務

東アジア・大洋州地域全体の2026年の成長率予測は4.2%(25年は5.0%)となっており、タイの1.3%という数字は地域の主要国で最低水準だ。他国がデジタル輸出やサービス業で回復を見せるなか、タイは「産業基盤の老朽化」と「少子高齢化」という構造的な課題が成長の足かせとなっている。

AI・EVは光、普及に壁

一方で、明るい材料もある。電気自動車(EV)やデジタルインフラへの直接投資は堅調で、マレーシアやベトナムとともにAI(人工知能)関連の輸出が一部で伸びている。

しかし、AIの活用状況をみると、タイや中国に拠点を置く外資系企業のAI導入率は13〜17%にとどまり、先進国の3分の1程度だ。世銀は、持続的な成長には単なる投資誘致だけでなく、労働者のスキル向上や接続環境の整備といった「構造改革」が不可欠だと指摘している。


【表】世界銀行による2026年の実質成長率予測(%)

国・地域2026年予測前年実績(推計)
タイ1.32.4
インドネシア5.15.0
フィリピン5.95.6
ベトナム6.56.0
中国4.25.0
東アジア・大洋州(全体)4.25.0
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