タイの製造業に異常事態が起きている。工場の「開業」を「閉業」が上回るという逆転現象が、中小企業(SME)の経営危機を浮き彫りにしている。
タイ工業連盟(FTI)の調査データによると、2026年に入りタイ国内では工場の閉鎖件数が新規開業件数を上回る「逆転現象」が続いている。大企業・外資系企業は投資拡大を続ける一方で、中小企業は経営資源・競争力の面で追いつけず、「瀬戸際」に立たされている企業が急増しているという。
大企業は拡大、SMEは縮小という二極化
タイ工業連盟のデータでは、大手製造業の設備投資は前年比で増加しているが、従業員200人未満のSME工場は逆に廃業・縮小が相次いでいる。この「二極化」の背景には、電気代・人件費の上昇、中国製品との価格競争激化、そして資金調達難という三重苦がある。
特に深刻なのは「人件費問題」だ。タイ政府は最低賃金の段階的引き上げを進めており、中小企業にとってはコスト増の直撃弾となっている。大企業であれば自動化で対応できるが、資金力のないSMEはそのまま利益を削られる構図だ。
中国製品との競争で「値段で勝てない」
製造業の経営者たちが口をそろえるのが「中国製品との価格差」だ。タイ市場には廉価な中国製品が大量に流通しており、タイ国内のSMEが価格で競争できなくなっている分野が増えている。繊維・アパレル・家電・雑貨など、かつてタイのSMEが強みを持っていた分野でも苦境が続く。
ある製造業の経営者は「日本企業との提携で品質面では対抗できているが、価格競争では限界がある。政府の支援がなければ廃業するしかない工場も出てくるだろう」と危機感を示した。
政府は対策を検討中
タイ政府は「ไทยช่วยไทยพลัส(タイ・チュアイ・タイ・プラス)」などの消費喚起策を通じて国内消費を底上げしようとしているが、製造業のSMEへの直接支援策は十分でないとの批判がある。日本企業との技術提携や品質向上への投資支援など、競争力強化に向けた具体策が求められている。
タイ経済の屋台骨を支えてきたSMEが今、存続の岐路に立っている。