
タイのエンターテインメント業界に激震が走った。音楽・テレビドラマ・ヘルスケア事業で知られる大手メディア企業RS社(RSグループ)が、3億1700万バーツ(約13億円)の債務支払いを不履行(デフォルト)とし、金融機関との債務再構成交渉に入ったことが明らかになった。
RSは長年タイの音楽業界をリードしてきた大手。アーティスト育成から音楽配信、テレビドラマ制作、さらには健康食品・サプリメント事業「CLC」まで手掛ける複合企業だ。しかし近年、デジタル化の波やストリーミングサービスの台頭で音楽ビジネスは苦境が続いており、健康食品事業も競争激化で業績が伸び悩んでいた。
3億1700万バーツの内訳と経緯
マティチョンが報じたところによると、RS社が支払いを履行できなかった3億1700万バーツは、金融機関からの借入金の返済に充当されるものだった。「流動性の問題」が主な原因とされており、現在は債権者である金融機関との交渉を通じ、返済スケジュールの組み直しを進めている段階だという。
SET(タイ証券取引所)への開示資料でも、RSは「資金繰りが逼迫しており、事業継続のため債務再構成が必要」とコメントしている。株価はこの報道を受けて急落した。
タイ音楽業界の厳しい現実
かつて「RSプロモーション」として音楽CDを世に送り出し、数多くのタイトップアーティストを輩出してきたRS社。しかし、SpotifyやYouTubeの普及によって音楽業界のビジネスモデルは根本から変わった。物理的なCDが売れない時代に、音楽レーベルとしての収益構造を維持するのは世界中で難しくなっている。
タイのSNSでは「RSの曲で育ったのに悲しい」「大好きなアーティストはどうなるの?」という声が続出する一方、「多角化経営が裏目に出た」「早くから再生する機会はあったはず」という厳しい意見も見られた。
事業再生の可能性は?
専門家の間では「コアの音楽・ドラマ著作権資産の価値は依然高い」として、外部からの資本参加や事業売却によって再建の可能性はあるとの見方もある。ただし市場の信頼を取り戻すためには、具体的な再建計画の提示が急がれる。
タイ芸能界の象徴とも言えるRS社の経営危機は、デジタル転換に乗り遅れたメディア企業の末路を象徴しているのかもしれない。「音楽の魔法」も、経営危機の前には力を失う——それが現実というものだ。