タイ、無査証滞在を60日から30日に短縮へ 不法就労対策を強化、デジタル申告「TDAC」も義務化

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タイ政府が、観光客の誘致策として2024年7月から実施してきた「60日間のビザなし滞在許可」を、再び30日間に短縮する案を閣議に提出したことが分かった。外務省が2026年3月下旬に正式提案した。背景には、長期滞在枠を悪用した外国人の不法就労や、コールセンター詐欺を主導する「グレービジネス」の横行がある。入国管理を「緩和」から「厳格化」へと180度転換し、同時に全ての入国者に対しデジタル入国カード「TDAC」の事前登録を完全義務化した。

アライバルビザ「60日」の副作用が露呈、犯罪組織の温床に

タイ政府はこれまで、日本を含む93カ国・地域を対象に、ビザなしでの滞在期間を30日から60日へ大幅に拡大していた。しかし、この猶予期間が、観光目的を装った不法就労や、中国系犯罪グループによるオンライン詐欺拠点の設営に利用されるケースが急増。警察当局の統計によると、2026年第1四半期の不法就労による摘発者数は前年同期比で4割増となっており、制度の「穴」を塞ぐことが急務となっていた。

今回の短縮案では、日本人も含む全対象国の無査証滞在が30日に戻る見通しだ。30日を超える滞在を希望する場合は、現地の入国管理局での延長手続き(30日分)が必要となる。タイ政府は「真の観光客には影響を与えず、長期滞在を隠れ蓑にする犯罪リスクのみを排除する」と説明している。

デジタル入国カード「TDAC」が完全義務化へ

入国プロセスのデジタル化も加速している。2026年4月現在、従来の紙の入国カード(TM6)は完全に廃止され、オンラインでの「タイ・デジタル・アライバル・カード(TDAC)」の事前登録が全ての外国人入国者に義務付けられた。

渡航者は入国の3日前までに専用サイトでパスポート情報や宿泊先、健康状態を登録し、生成されたQRコードを審査官に提示する必要がある。このシステムは、入国審査の待ち時間短縮を狙うだけでなく、当局が渡航者の動向をリアルタイムで追跡することを可能にする。登録を失念した場合、航空機への搭乗を拒否されるケースも出始めており、日本人ビジネスマンにとっても「タイ入国の新常識」として注意が必要だ。

日本人向け「短期商用ビザ免除」は26年末まで継続

制度全体が厳格化するなか、日本国籍の一般パスポート保持者を対象とした「30日以内の短期商用ビザ免除制度」は、予定通り2026年12月31日まで継続される見通しだ。これはタイ国内での投資や商談を促進するための経済特例措置であり、観光目的の枠組みとは別枠で保護されている。 しかし、現地での実務を伴う出張や、労働許可証(ワークパーミット)を持たない状態での長期滞在については、審査官の裁量による「入国拒否」のリスクが高まっている。日系金融機関の担当者は「タイ政府は現在、外貨を落とす『優良客』と、安価に滞在し続ける『低付加価値客』の選別を露骨に進めている」と分析する。

アライバルビザ(VoA)対象国への波及

インドや中国など、アライバルビザ(空港到着時ビザ)を利用する国々に対しても、滞在期間の短縮と電子的な事前承認(ETA)への統合が進められている。タイはASEAN域内での「デジタル・ゲートウェイ」を目指しており、高度なセキュリティと観光促進のバランスをどう取るか、アヌティン政権の入国管理政策は極めてシビアな選別局面に入っている

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