タイ社会保険 完全ガイド
制度・給付・注意点を徹底解説
タイで働く日本人が知っておくべき社会保険の全体像を、加入区分・7つの給付内容・2026年改正まで、ひとつの記事でまるごとわかりやすく解説します
- タイ社会保険制度とは
- 3つの加入区分(第33条・第39条・第40条)
- 第33条(在職者)
- 第39条(任意継続)
- 第40条(自営業・フリーランス)
- 3区分の比較表
- 保険料の計算方法
- 7つの給付内容
- ① 医療給付
- ② 出産給付
- ③ 障害給付
- ④ 死亡給付(遺族給付)
- ⑤ 児童手当
- ⑥ 失業給付
- ⑦ 老齢給付(年金・一時金)
- 2026年制度改正の内容と影響
- 日本人が特に注意すべきポイント
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
タイ社会保険制度とは
タイの社会保険制度は「社会保障法(Social Security Act)」に基づき、社会保険事務局(SSO:Social Security Office)が運営しています。日本の社会保険と同様、傷病・出産・障害・死亡・育児・失業・老後など、さまざまなリスクに対する給付を行う制度です。
タイで合法的に就労している外国人(日本人を含む)も、条件を満たす場合は加入義務があります。保険料は労使折半で負担するため、企業側も同額を拠出します。
3つの加入区分
タイ社会保険には加入状況や就業形態によって3つの区分があります。日本人がタイで就労する際に主に関係するのは第33条です。
タイの事業所(1人以上の従業員がいる会社)に雇用されている労働者が対象です。外国人であってもタイ法人と雇用契約を結び給与を受け取っている場合は加入義務があります。
- タイ法人勤務の現地採用日本人
- タイ法人と雇用契約を結んでいる駐在員
- パートタイム・短期雇用も対象(一定条件あり)
第33条被保険者として12ヶ月以上加入した後に退職した場合、退職後6ヶ月以内に申請することで社会保険を任意継続できます。
- 保険料:月額432バーツ(固定)
- 申請期限:退職後6ヶ月以内にSSOへ申請
- 給付:医療・出産・障害・死亡・児童手当・老齢給付は継続(失業給付は対象外)
- 退職後もタイに在住し医療給付などを継続したい場合に有効
会社に雇用されていない自営業者・フリーランス向けの任意加入制度です。3つのプランから選択できます。
| プラン | 保険料(月額) | 給付内容 |
|---|---|---|
| プラン1 | 70バーツ | 傷病・障害・死亡 |
| プラン2 | 100バーツ | 傷病・障害・死亡・老齢 |
| プラン3 | 300バーツ | 傷病・障害・死亡・老齢・出産・児童手当 |
| 項目 | 第33条 | 第39条 | 第40条 |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 会社員(義務加入) | 元第33条加入者(任意) | 自営業・フリーランス(任意) |
| 保険料 | 月給の5%(上限875THB※) | 月432THB(固定) | 月70〜300THB(プラン選択) |
| 医療給付 | ✓ | ✓ | ✓(全プラン) |
| 出産給付 | ✓ | ✓ | ✓(プラン3のみ) |
| 障害給付 | ✓ | ✓ | ✓(全プラン) |
| 死亡給付 | ✓ | ✓ | ✓(全プラン) |
| 児童手当 | ✓ | ✓ | ✓(プラン3のみ) |
| 失業給付 | ✓ | ✗ 対象外 | ✗ 対象外 |
| 老齢給付 | ✓ | ✓ | ✓(プラン2・3のみ) |
※ 2026年1月〜の上限額。2025年以前は750THB。
保険料の計算方法
第33条の保険料は月給の5%を労使それぞれが負担します(合計10%)。ただし、算定対象となる月給には上限(賃金上限)が設定されており、2026年以降は段階的に引き上げられます。
| 月給 | 計算対象額 | 従業員負担(5%) | 会社負担(5%) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 10,000バーツ | 10,000バーツ | 500バーツ | 500バーツ | 1,000バーツ |
| 17,500バーツ | 17,500バーツ(上限) | 875バーツ(上限) | 875バーツ(上限) | 1,750バーツ |
| 30,000バーツ以上 | 17,500バーツ(上限) | 875バーツ(上限) | 875バーツ(上限) | 1,750バーツ |
月給が17,500バーツを超えていても、社会保険料の計算は17,500バーツを上限として行います。月給30万バーツの人も、月給17,500バーツの人も、保険料の計算上は同じです。
- 第39条:月額432バーツ(固定)。会社負担なし、全額自己負担
- 第40条(プラン1):月額70バーツ (プラン2):月額100バーツ (プラン3):月額300バーツ
7つの給付内容
タイ社会保険(主に第33条)には以下の7つの給付があります。それぞれ受給条件が異なるため、しっかり確認しておきましょう。
緊急時は指定病院外でも一定額まで補償されますが、対応が複雑なため事前に確認しておくことを推奨します。また、歯科治療は対象外です(別途割引制度あり)。
| 給付の種類 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 出産一時金 | 15,000バーツ/回 | 出産回数に制限なし |
| 産前検診費 | 実費最大1,500バーツ | 領収書提出が必要 |
| 産休中の賃金補償 | 平均月給の50%×90日分(最大2回) | 2026年:最大26,250バーツ |
| 給付の種類 | 条件 | 金額 |
|---|---|---|
| 葬儀費(固定) | 全員共通 | 50,000バーツ |
| 遺族補償(短期) | 納付36〜119ヶ月 | 平均月給50%×4ヶ月分 |
| 遺族補償(長期) | 納付120ヶ月以上(10年以上) | 平均月給50%×12ヶ月分 |
日本に帰国している子どもについて、SSOへの申請・受給自体は可能ですが、実務上の確認が必要なケースもあります。詳細はSSO窓口に問い合わせてください。
| 退職理由 | 給付率 | 最長期間 | 2026年月額上限 |
|---|---|---|---|
| 会社都合(解雇・倒産) | 平均月給の60% | 180日(6ヶ月) | 10,500バーツ |
| 自己都合(自主退職) | 平均月給の30% | 90日(3ヶ月) | 5,250バーツ |
外国人特有の注意点:失業給付を受けながらタイに滞在するには有効なビザが必要です。退職後はノンイミグラントBビザの更新が難しくなるため、フリーランスビザや配偶者ビザへの切り替えなど、在留資格の確保が別途必要になります。
▶ 老齢年金(180ヶ月=15年以上納付)
| 納付期間 | 年金額の計算式 | 2026年月額試算 |
|---|---|---|
| 15年(180ヶ月) | 平均月給 × 20% | 3,500バーツ/月 |
| 20年(240ヶ月) | 平均月給 × 27.5%(20%+7.5%) | 4,813バーツ/月 |
| 25年(300ヶ月) | 平均月給 × 35%(20%+15%) | 6,125バーツ/月 |
※ 試算は賃金上限17,500THBで計算。「平均月給」は直近60ヶ月の平均賃金(上限額)を使用。15年超は1年ごとに1.5%加算。
▶ 老齢一時金(180ヶ月未満の場合)
計算式:平均月給 × 3% × 納付月数(12ヶ月未満は一時金なし)
例:60ヶ月(5年)加入の場合 → 17,500 × 3% × 60 = 31,500バーツ
2026年制度改正の内容と影響
2026年1月1日より、タイ社会保険の賃金上限(計算基礎賃金の上限)が段階的に引き上げられます。これに伴い、保険料負担も増加しますが、各種給付額も大幅にアップします。
| フェーズ | 期間 | 賃金上限 | 最大保険料(月) | 最大失業給付(月) | 老齢年金(15年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 改正前 | 〜2025年12月 | 15,000 THB | 750 THB | 9,000 THB | 3,000 THB |
| フェーズ1 | 2026年1月〜2028年12月 | 17,500 THB | 875 THB | 10,500 THB | 3,500 THB |
| フェーズ2 | 2029年1月〜2031年12月 | 20,000 THB | 1,000 THB | 12,000 THB | 4,000 THB |
| フェーズ3 | 2032年1月〜 | 23,000 THB | 1,150 THB | 13,800 THB | 4,600 THB |
| 給付の種類 | 2025年以前 | 2026年〜 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 傷病・障害月額上限 | 7,500バーツ | 8,750バーツ | +17% |
| 産休補償(90日)上限 | 22,500バーツ | 26,250バーツ | +17% |
| 失業給付月額上限(会社都合) | 9,000バーツ | 10,500バーツ | +17% |
| 老齢年金(15年加入) | 3,000バーツ/月 | 3,500バーツ/月 | +17% |
| 老齢年金(25年加入) | 5,250バーツ/月 | 6,125バーツ/月 | +17% |
日本人が特に注意すべきポイント
タイ社会保険の制度自体はタイ人・外国人共通ですが、日本人(外国人)ならではの注意点があります。
失業給付を受け取るにはタイに滞在する必要があります。しかし退職後はノンイミグラントBビザ(就労ビザ)の更新ができなくなるため、別の在留資格(配偶者ビザ、退職者ビザ、フリーランスビザなど)への切り替えが必要です。
日本帰国後も老齢一時金・老齢年金の受給申請は可能です。手続きは以下の方法で行えます。
- タイ国内のSSO窓口で申請(帰国前に手続きする場合)
- 在日タイ大使館(東京)または在日タイ領事館を通じて申請
- 代理人(タイ在住の知人等)に委任状を持たせてSSOで手続き
2026年現在、日本とタイには社会保障協定がありません。そのため:
- タイの納付期間と日本の納付期間を合算することはできない
- タイの年金を日本の年金と連携させることはできない
- 二重加入(日タイ両方に保険料支払い)が発生する場合がある
医療給付は指定した病院のみで使えます。バンコクの場合は日本語対応可能な病院(サミティベート病院、バムルンラード病院など)が指定可能かどうかを事前に確認しましょう。ただしSSO指定の提携病院リストに含まれているかどうかも確認が必要です。
退職後もタイに滞在する予定がある場合、第39条での任意継続(月432バーツ)は医療給付を継続するための有効な手段です。ただし申請期限(退職後6ヶ月以内)を過ぎると加入できなくなります。
よくある質問(FAQ)
📋 まとめ:タイ社会保険 完全ガイド
- タイで会社勤務の日本人は第33条への加入義務がある
- 保険料は月給の5%(上限875バーツ)を会社と折半して負担
- 給付は医療・出産・障害・死亡・児童手当・失業・老齢の7種類
- 失業給付は第33条のみ、第39条・第40条は対象外
- 2026年の制度改正で賃金上限が15,000→17,500バーツに引き上げ
- 給付額も約17%増加(老齢年金15年:3,000→3,500バーツ/月)
- 日タイ社会保障協定は未締結(二重加入の可能性あり)
- 帰国後の老齢一時金・年金のためにタイの銀行口座を維持すること
- 退職後の医療給付継続には第39条(月432バーツ)の活用を検討