日本は地上波・ネットのハイブリッド配信、タイは「放送危機」と「違法視聴」の影
北中米3カ国で開催される2026年W杯まであと2ヶ月。サッカーファンの熱気が高まる中、日本とタイでは視聴環境に大きな差が出ています。また、タイ国内では「無料放送」の不在が、ある種の「負の風物詩」を助長する懸念も高まっています。
■ 日本:NHK・民放・DAZNの強力体制
日本国内では、ファンの期待に応える形で盤石の放送体制が整っています。
- 地上波: NHK、日本テレビ、フジテレビの3社が、日本代表戦を含む主要試合の生中継を担当します。
- ネット配信: DAZNが日本戦を無料でライブ配信するほか、NHKもネット同時配信を実施。
- NHK BSP4K: 全104試合を放送する予定で、高画質での全試合視聴環境が担保されています。
■ タイ:放送権利を巡る混迷と「マスト・ハブ」の壁
対照的にタイでは、いまだに地上波放送の目処が立っていません。
- 規制緩和の影響: かつては「マスト・ハブ(Must-Have)」ルールにより政府系基金が放映権を買い取っていましたが、W杯がこのリストから除外されたことで、多額の税金投入が困難になりました。
- 放送権料の高騰: 試合数の増加に伴う価格高騰に、民間放送局も二の足を踏んでいる状態です。
■ タイの「負の風物詩」:違法配信とサッカー賭博
タイ国内で無料放送が実施されない、あるいは有料放送のみになった場合、懸念されるのが「アンダーグラウンドへの流入」です。これはタイのW杯における「影の風物詩」とも言える根深い問題です。
- 違法ネット放送の横行 SNSや特定のWebサイトを通じて配信される「海賊版」の生中継です。当局の取り締まり(CIBなどによる一斉摘発)が強化されているものの、人気インフルエンサーが実況を付けながら配信し、同時に賭博サイトへ誘導する手口が絶えません。
- サッカー賭博の過熱 タイでは宝くじ以外の賭博は禁止されていますが、W杯期間中は毎年数千人規模の逮捕者が出るほど賭博が過熱します。前大会(2022年)では約1万2000人が検挙、112億バーツ(約450億円)以上の資金が押収されました。
■ 果たしてクリーンな観戦環境は整うか
日本では「どこでも見られる」安心感がある一方、タイでは「どうにかして見る」ための違法行為が蔓延するリスクを抱えています。タイのサッカーファンからは、「せめて日本のように、主要試合だけでも無料放送を」と切実な声が上がっていますが、開幕まで時間が限られる中、解決の糸口は見えていません。
日刊タイニュース編集長:タイ流「観戦スタイル」の変遷 かつては街中の食堂やスポーツバーで大勢で観戦するのが一般的でしたが、最近ではスマホ一台で「違法配信+オンライン賭博」という、より個人的で隠密なスタイルにシフトしています。これが当局の摘発をより困難にしている一因でもあります。