「まさかここまで来るとは思っていなかっただろう」——タイ南部サムイ島の高級リゾート地帯に潜伏していたイスラエル系国際犯罪組織「アベンジャーズ」の幹部が、インターポール・タイ移民局・イスラエル大使館の三者連携によって電光石火で逮捕された。4月29日夕方のことだ。
豪邸パーティーに踏み込んだ捜査員
逮捕されたのは28歳のマタン・アルビブ容疑者。スラタニー県移民局の捜査員が、インターポールおよびイスラエル大使館からの情報提供を受け、サムイ島内の高級別荘を急襲した。アルビブ容疑者は4人の仲間と滞在していたが、いずれも逮捕を免れず手錠をかけられた。
タイ移民局第6管区司令官は4月30日、報道陣に対し「対象者はインターポールの指名手配を受けており、イスラエル大使館からも極めて危険な人物として情報提供があった」と説明。現地では「まるで映画のような作戦だった」との声も上がっている。
「アベンジャーズ」——イスラエル発の国際犯罪組織
アルビブ容疑者が所属するとされる「アベンジャーズ」は、窃盗・詐欺・不法武器所持・麻薬密売などを生業とするイスラエル系の国際犯罪シンジケートだ。アルビブ容疑者自身もイスラエル国内で過去に複数回の実刑判決を受けており、服役後に海外へ逃亡したとみられている。
イスラエル大使館の報告によれば、同容疑者は「組織内の重要な作戦立案者」として機能しており、これまで摘発が難しかった理由として「東南アジア各地を転々としていた」点が挙げられる。タイには観光ビザで入国し、サムイの高級リゾートを隠れ蓑にしていたとみられる。
タイ当局の対応——国外追放そして本国送還へ
タイ移民局はアルビブ容疑者に対し、滞在許可の即時取り消しおよびタイへの永久入国禁止(ブラックリスト登録)を適用した。今後、イスラエル当局への正式な身柄引き渡し手続きが進められ、本国での訴追に向けた準備が整えられる予定だ。
タイでは近年、コサムイやプーケットなどのリゾート地が外国人犯罪者の「隠れ家」として使われるケースが相次いでいる。タイ警察は「観光天国の裏の顔」に対する取り締まりを強化しており、今回の逮捕劇はその成果の一つとして評価されている。
一方で「なぜ入国時に察知できなかったのか」という批判的な声もSNS上で噴出しており、入国管理の在り方を問う議論が再燃しそうだ。豪邸で優雅に過ごしていた逃亡犯が逮捕された事実は、「タイはもはや犯罪者の楽園ではない」という当局のメッセージとも取れる。だが果たして、これで十分なのか——問われているのは、タイの治安そのものだ。