
タイ中央捜査局は2026年5月20日、「霊視によるカルマ除去」を名目に女性たちを性的に暴行したとして、アージャーン・パイサーン(67)を緊急逮捕した。容疑は「抵抗できない状態の人物への強姦」および「15歳以上18歳未満の未成年者の誘拐・わいせつ行為」の2罪。最高懲役20年が見込まれる重大犯罪だ。
「過去生のエネミー」を見抜く力の正体
容疑者には「第六感で過去生の因縁を見抜ける」という触れ込みがあった。病気が治らない、仕事がうまくいかない……そんな悩みを持つ人々が信者として集まり、アージャーン・パイサーンのもとを訪れた。
彼の手口は巧妙だった。まず相談者に個人情報と悩みを書かせ、各地の寺院参りを指示。「参拝写真を送れば霊視の力が高まる」と信じ込ませた。そして「過去生の因縁の相手」の名前と住所を告げ、その人物が本当に実在することで信頼を獲得していた。
この「驚くべき的中率」の秘密が捜索で明らかになった。容疑者の自宅から、小学校から大学まで多数の学校の「同窓会名簿」が13冊以上押収された。各名前には印がつけられており、そこから「エネミー」の名前を選んで告げていたのだ。名簿から名前を引っ張り出すだけで神通力のある予言者を演じられるとは——まさに卑劣な知能犯だ!
被害者の証言「信じていたのに…」
被害者は少なくとも2件の正式告訴が確認されている。
被害者1:慢性的な頭痛で仕事ができなくなり、SNSでアージャーン・パイサーンの評判を見て2026年5月2日に訪問。二人きりの部屋で「バラモン式カルマ除去儀式」と称し性的暴行を受けた。
被害者2:2025年2月、腰痛が治らない母親を連れて訪問。「お母さんは先に食事を」と母子を引き離し、息子だけを個室に呼び込み「カルマが強い」と告げて同様の暴行を行った。
被害は2023年ごろから続いていたとみられ、「動物を使ったわいせつ行為」など複数の異常行動も明らかになっている。告訴をためらっていた被害者が複数名いたとみられ、氷山の一角に過ぎない可能性が高い。
タイSNS「こんな奴がいたとは」と騒然
逮捕の報がタイSNSを駆け巡ると、Facebookでは「信じていた人が本当にかわいそう」「宗教を悪用する最低の犯罪」といった怒りの声が殺到した。一方「霊視師を名乗る人物には十分注意を」という警告の投稿も急増。タイ語のトレンドワードにも「アージャーン・パイサーン」が登場するほどの反響だ。
容疑者は現在、すべての容疑を否認し弁護士との相談を待っている状態だという。しかし押収された同窓会名簿や被害者の証言、映像記録が待ち受ける法廷で「霊視の力」はいったいどれほど通用するのだろうか。神通力があれば逮捕される前に気づけたはず——いや、名簿には自分の罪の証拠を記す欄はなかったようだ。