「あともう少しだけ…」愛する家族への献身が招いた一瞬の惨劇
タイ東部チャンタブリー県を襲った突然の雷撃。命を落としたプロムさん(54)が、荒天の中でなぜ干潟に立ち続けたのか――。その裏には、あまりにも切ない親心が隠されていた。
晩餐の「ケーンソム(酸味スープ)」が暗転
親族の証言によると、この日は都会で働く娘と孫たちが久しぶりに帰省する予定だったという。「孫たちが大好きな貝のスープ(ケーンソム)を作ってやりたい」。プロムさんは朝から意気揚々と干潟へ向かった。空が暗転し、周囲が避難を始める中、彼女だけは「あと一杯分、あと少しだけ」と、泥にまみれて貝を拾い続けた。その直後、死神の閃光が彼女を貫いたのだ。
遺族の号泣「私が止めていれば…」
変わり果てた姿で発見されたプロムさんの傍らには、泥だらけの籠いっぱいに詰められた貝が残されていた。
- 長女(28)の言葉: 「電話で『雨が降りそうだから早く帰って』と伝えたんです。でも母は『あんたたちの好きな貝がたくさん獲れるよ』って笑って……。あの時、もっと強く言っていれば。母は私たちのために殺されたようなものです」
- 夫(57)の言葉: 「形見になった金のネックレスは、私が20周年の結婚記念日に贈ったもの。それがまさか、妻を連れ去る導火線になるなんて……」
天国へのお土産となってしまった貝の籠を前に、遺族の涙は今も枯れることがない。