
タイ・プーケット島の不動産市場が異例の過熱状態を呈している。2025年の平均価格上昇率は年率15.3%に達し、バンコク(8.7%)を大きく上回った。中国・欧州・中東からの外国人投資マネーが流入する一方、地元住民の住宅事情が悪化しているとして、政府内でも是正策をめぐる議論が始まっている。
なぜプーケットに資金が集中するのか
プーケット不動産ブームの背景には複数の要因が重なっている。まず2025年に導入された「LTR(長期居住者)ビザ」と「富裕層向けエリートビザ」の拡充で、タイに不動産を購入した外国人が長期滞在しやすくなった。また、外国人がコンドミニアムを区分所有できる比率(外国人所有枠)が全体の49%まで認められているため、プーケットのリゾートコンドミニアムは投資商品として欧米・アジアの富裕層に人気が高い。
地政学的要因も見逃せない。ロシア・ウクライナ紛争の長期化でロシア人富裕層がタイに流入し、プーケット南部のカタ・カロンエリアにはロシア語の看板が立ち並ぶほどだ。中東情勢の不安定化でも、ドバイに次ぐ「安全な投資先」としてプーケットへの注目が高まっている。
価格高騰の実態
現地の不動産仲介業者によると、ラワイ・ナイハーン地区の海沿いヴィラは2年前の1.5〜2倍、カマラ・スリン地区のラグジュアリーコンドミニアムでは2.5倍に達する物件も出ている。1ベッドルームのコンドミニアムの最低価格は400万バーツ(約1,600万円)を超え、海望ヴィラでは1億バーツ超えも珍しくない。
賃貸市場も高騰しており、長期在住の外国人や現地タイ人が住宅を確保できないという問題が表面化している。プーケット市内の一般的な1LDKの月額賃料は3年前の2倍近い3〜5万バーツになったとの報告もある。
タイ政府の対応と課題
タイ政府はこれまで外国人の土地所有を原則禁止(建物のみ可能)としてきたが、一部で外国人土地所有解禁の議論が浮上している。財務省は「特定エリア・特定条件下での外国人土地所有解禁が投資促進に有効」との見解を示す一方、農業省や内務省は「農地・沿岸部の保護が最優先」として反対姿勢を崩していない。
プーケット県当局は観光客や投資家の流入に対応するため、インフラ整備(道路・水道・電力)への投資を加速させる方針だが、人口増加のペースに追いついていないのが現状だ。住民からは「地元の人間が地元に住めなくなる」との切実な声が上がっており、社会的格差拡大への懸念が政治問題化しつつある。
日本人投資家の動向
プーケットへの日本人不動産投資も増加傾向にある。「円安でも比較的割安感がある」「タイのコンドミニアムは賃貸収益率が5〜8%と高い」「AirBnBなど短期賃貸での運用が可能」という理由が挙げられる。ただし、タイの不動産投資には外国為替規制・相続問題・管理会社の信頼性など固有のリスクも多く、十分な現地調査と法的確認が不可欠だ。プーケットの不動産ブームがいつまで続くのか、市場関係者の見方は割れている。