「老後の資産を、自分の力で積み上げる」——そのための制度が、タイにも本格的に動き始めようとしている。
タンセッタキットが5月26日に報じたところによると、タイ証券取引委員会(タイ証取委 )が「TISA(Thai Individual Savings Account=タイ版ISA)」の導入を財務省に正式提案した。長期的な個人投資を税制上の優遇措置で後押しする、日本のNISAやイギリスのISAに近い仕組みだ。
TISAとは何か
TISAは「タイ版個人貯蓄投資口座」と訳すことができる。利用者は年間一定額までTISA口座に資金を入れ、株式・投資信託・債券などの金融商品に投資することができ、そこから生じる配当・値上がり益・利息などが一定期間、税制優遇(非課税または減税)の対象となる仕組みが検討されている。
日本では「NISA(少額投資非課税制度)」が2014年に始まり、2024年の拡充後に個人投資家の裾野が大きく広がった。タイのTISAも同様に、これまで銀行預金のみに資産を預けていた「投資未経験層」を市場に引き込む効果が期待されている。
タイの「投資不足」という課題
タイの家計金融資産の構成は、依然として「銀行預金」への偏りが大きい。低金利が続く中、インフレに対して実質的に目減りしていく預金に、多くのタイ国民が「問題があるとは感じながらも代替手段を知らない」状態だと言われる。
ก.ล.ต.の試算では、TISAが導入されれば、中長期的に国内株式市場への新規資金流入が数千億バーツ規模に達する可能性があるという。これはSET指数の底堅さにもつながる好材料として、市場関係者から期待を持って見られている。
日本のNISAとの比較で見えるもの
日本のNISAは「年間投資枠」「非課税期間」「対象商品」など、制度の細かな設計が重要だ。タイのTISAも同様に「どこまで非課税にするか」「最低保有期間は何年か」「どのような金融商品を対象とするか」という点が制度の魅力を左右する。
タイ証取委の提案段階では、具体的な数字はまだ明らかにされていないが、「長期保有を促す方向での設計」が基本方針とのことだ。
日本では「投資は怖い」という意識が長年根強かったが、NISAの普及がそのハードルを下げた。タイでもTISAが、個人の「貯蓄から投資へ」という意識転換の起爆剤となることが期待される。