宿泊市場の「グレーゾーン」に終止符
タイ政府は、長年議論の的となっていた分譲マンション(コンドミニアム)の短期間貸し出し、いわゆる「民泊」を原則合法化する方針を固めた。内閣は2026年に入り、既存のホテル法を大幅に改訂した「新宿泊施設法(Accommodation Act)」の草案を承認。これにより、これまで「30日未満の貸し出しはホテルライセンスがない限り違法」とされてきた規制が撤廃され、当局への登録を条件に最短1日からの貸し出しが解禁される。
背景に供給過剰と観光スタイルの変化
今回の踏み込んだ措置の背景には、バンコクやプーケットを中心としたコンドミニアムの深刻な在庫過剰がある。不動産開発大手各社は、外国人投資家向けの販売が鈍化する中、民泊という新たな収益モデルを提示することで物件価値の維持を狙う。
また、観光政策の観点からは、デジタルノマドや家族連れなど「ホテルよりもキッチン付きの住宅型宿泊施設」を好む新たな層の取り込みが不可欠となった。政府は「禁止しても地下に潜るだけだ」との判断から、実態に即した「管理された観光(Managed Tourism)」へと舵を切った形だ。
新制度の骨子:規模に応じた階層化
新法では、宿泊施設を規模や部屋数に応じて「小・中・大」の3段階に分類する。
- 小規模(8室以下): 簡易登録のみで運営可能。火災報知器の設置など基本的な安全基準のみが課される。
- 中規模(9〜40室): コンドミニアムの複数ユニットを運営する事業者が対象。より厳格な防火基準と、居住者のプライバシー保護措置が求められる。
- 大規模(40室超): 従来のホテルライセンスと同等の厳しい基準が適用される。
居住者保護と業界の反発が課題
一方で、合法化に伴う課題も山積している。コンドミニアム管理組合(Juristic Person)には、民泊を認めるかどうかの決定権が引き続き委ねられる見通しだが、短期滞在客による騒音や共用施設の混雑を懸念する実住者の反対は根強い。
また、既存のホテル業界からは「不公平な競争だ」との不満が噴出している。これに対し政府は、民泊事業者にも観光税の徴収や、宿泊者名簿(TM30)のデジタル報告を徹底させることで、宿泊市場全体の透明性を高め、税収増に繋げる狙いだ。