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バンコク深夜のパブ火災、死者27人 ふさがれた非常口が招いた大惨事

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規制と実態の乖離、17年前の教訓は生かされたのか

タイの首都バンコクで12日深夜、大型飲食店を襲った火災は、週明けまでに27人の死者と70人超の負傷者を出す惨事となった。在留邦人が多く住むバンコクの日本人エリアで発生した2009年のナイトクラブ「サンティカ」火災(死者67人)以来、17年ぶりの規模となる夜間営業施設の大量死事故だ。捜査当局は、ふさがれた非常口と電気系統の不具合に焦点を絞り、業務上過失の立件を視野に調べを進めている。

停電、爆発音、そして暗闇

火災が発生したのは12日午後11時50分ごろ。現場はバンコク北部チャトチャック区チョームポン地区、ラートプラオ通りの五差路近くにある大型パブレストラン「ローンビア・ナ・ラートプラオ」。ビアホールとライブステージを併設し、平日でも600〜700人が訪れる人気店だった。当夜は約300人の客がバンドの生演奏を楽しんでいた。

生存した演奏者の証言によると、最初の異変はステージ裏の配電設備から立ち上る煙だった。直後に店内の電源が落ち、爆発音が響いた。バンコク都当局の調べでは、火は天井を伝って正面入り口方向へ急速に燃え広がり、客は暗闇の中、店奥の非常口へ殺到した。

だが、逃げ場は機能しなかった。方向を見失った多くの客が窓のないトイレに誤って駆け込み、そこで力尽きた。犠牲者の大半はトイレ内と非常口の直前で発見されている。倒れた人々が通路をふさぎ、後続の避難をさらに困難にしたとみられる。

非常口にビールケース、施錠された扉

捜査で浮かび上がったのは、避難経路の深刻な管理不備だ。警察の現場検証では、2カ所の非常経路のうち一方は厨房脇にビールケースが積まれ、もう一方は菓子販売用のテーブルでふさがれていた。消火に当たった消防士は「出口として使われるはずの扉が2本のかんぬきで施錠されていた」と証言する。棚に阻まれ、一度に1人しか通れない出口もあった。

電気系統についても、漏電発生時にブレーカーが電源を遮断しなかった可能性が予備調査で指摘されており、設備の保守状況が問われている。

一方、バンコク都のチャッチャート知事によれば、同店は音楽演奏の許可を得て合法的に営業しており、今年4月には行政の立ち入り検査も受けていた。検査を通過した店舗でなぜ惨事が起きたのか――。書類上の適法性と現場の実態の乖離が、今回の事故の核心にある。

首相が未明に現場入り、問われる「サンティカの教訓」

アヌティン首相(内相兼務)は発生から約2時間後の13日未明に現場入りし、「死者の多くは煙を吸い込んだことによるものだ」と述べた。国家警察のキットラット長官は、経営者からの事情聴取を急ぐ方針を示したが、経営者自身も負傷し集中治療室で治療を受けているという。

タイでは09年の「サンティカ」火災後、娯楽施設の防火規制が強化されたはずだった。11年には同クラブの経営者らに実刑判決が下り、規制強化の象徴となった。しかし、その後も22年には東部チョンブリ県のパブ火災で十数人が死亡するなど、同種の事故は繰り返されている。

観光立国タイにとって、ナイトライフ産業は外国人観光客を引き付ける重要な収益源だ。その一方で、増改築を重ねた店舗の複雑な構造、営業優先の安全管理、監督当局の検査の形骸化という構造問題は温存されてきた。今回の火災は、規制の「書面」と現場の「実態」の落差が人命に直結することを、改めて突き付けている。

捜査当局は今後、出火原因の特定と併せ、避難経路の管理責任を巡り経営側の刑事責任を追及する構えだ。17年前と同じ問いが、再びタイ社会に投げかけられている。

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