4月28日は国際労働機関(ILO)が定める「世界労働安全衛生の日(World Day for Safety and Health at Work)」。今年のテーマは「デジタル変革時代における安全衛生」だ。世界中で安全な職場環境を訴える声が上がる中、タイでは依然として深刻な職場事故が後を絶たない実態がある。
年間死者200人超——建設・製造業が突出
タイ社会保障局(SSO)のデータによると、タイ国内の職場災害による死者は年間200人以上にのぼる。特に深刻なのは建設業と製造業で、高所作業中の転落、重機による圧死、化学物質への暴露といった事故が多発している。受傷者数まで含めれば毎年数万件規模の労働災害が発生しており、問題の根深さを示している。
タイ労働省は2024年から「ZERO ACCIDENT キャンペーン」を展開し、建設現場や工場への抜き打ち検査を強化。2025年には警告処分件数が前年比約30%増加したが、「中小企業を中心にまだまだ安全管理が形式的にとどまっているケースが多い」と担当官は語る。
「外国人労働者」の安全も課題
タイの建設・製造業に従事する外国人労働者(主にミャンマー・カンボジア・ラオス出身)の安全教育も大きな課題だ。言語の壁により安全マニュアルが十分に理解されないケースや、過酷な労働環境を強いられながらも「失業を恐れて黙っている」という実態が指摘されている。
ILOバンコク事務所は「デジタルツールを使った多言語対応の安全教育コンテンツ普及が急務」と強調。タブレットやスマートフォンを使ったビジュアル訓練教材の導入が、現場での事故防止に有効だとしている。
政府の取り組みと今後の展望
アヌティン政権は高齢化社会への対応として労働政策を見直す方針を打ち出しており、その中に職場安全衛生の強化も含まれている。2026年度中に安全衛生基準の改正を行い、特に中小企業向けの支援策を充実させる予定だ。
国際安全衛生デーを機に、タイ社会全体が「働く人の命と健康」を守る取り組みを強化できるか——問われているのは制度だけでなく、企業と社会の意識そのものだ。