4年に一度の祭典が、タイの広告業界にとっては「期待外れの祭り」になりつつある。北米3カ国で開催中のサッカー・ワールドカップ(W杯)2026を巡り、タイ国内で見込まれた広告・販促の資金循環が当初予測を20%も下回る見通しであることが分かった。クルンテープ・トゥラキット紙が13日に報じた。
最大の要因は「タイムゾーンの壁」だ。開催地の米国・カナダ・メキシコとタイの時差は12時間前後あり、注目カードの多くがタイ時間の早朝や午前中に組まれている。ゴールデンタイムの生中継が激減した結果、テレビ観戦者数が伸びず、ブランド各社は高額な広告枠の購入に二の足を踏んでいるという。
過去のW杯では、欧州開催なら深夜帯、アジア開催なら夜間に試合が集中し、飲食店やビール、スナック菓子、家電などの「観戦特需」が発生してきた。ところが今大会は早朝キックオフが中心のため、パブリックビューイングや飲食店の集客効果も限定的。広告主のマーケティング予算はSNSの短尺ハイライト動画やオンライン施策へ流れ、従来型のテレビ広告や店頭販促の落ち込みを補い切れていない。
広告業界関係者の間では「消費者の関心自体は高いが、リアルタイム視聴と結びつかなければ広告費は動かない」との声が聞かれる。タイ経済は個人消費の回復が鈍いなかで、W杯は数少ない消費喚起の起爆剤と期待されていただけに、業界の落胆は小さくない。
一方で、時差の影響を受けにくいスポーツくじや配信プラットフォーム、朝営業に切り替えたスポーツバーなど、逆風下でも商機をつかむ業態もある。残る決勝トーナメントの盛り上がり次第では、終盤に駆け込みの広告出稿が増える可能性もあり、業界は最後の巻き返しに望みをつないでいる。