タイ商務省が発表した2026年第1四半期(1~3月)の通商統計によると、対日本向け農産物・加工食品の輸出額が前年同期比で約10%伸びたことが分かった。日タイ経済連携協定(JTEPA)の発効から約20年が経過する中、関税割当枠の活用がかつてない水準で進んでいる。背景にあるのは、日本の消費者の「健康志向」と「即食ニーズ」を捉えたタイ企業の緻密な商品開発戦略だ。
主力である鶏肉製品や冷凍フルーツに加え、最近では「オーガニック」「低GI(食後血糖値の上昇が緩やかな食品)」「植物性代替肉」といった高付加価値商品の伸びが目立つ。タイ政府が推進する「世界の厨房(キッチン・オブ・ザ・ワールド)」政策に基づき、日本市場の厳しい衛生・品質基準をクリアした工場への補助金を拡充したことが実を結んだ。日本の大手流通チェーンとタイの食品加工メーカーによる共同開発も活発化しており、原材料の輸出から、日本国内でそのまま店頭に並ぶ「最終製品」としての輸出へのシフトが鮮明だ。
また、物流面での改善も寄与している。コールドチェーン(低温物流)の高度化により、ドリアンやマンゴーといった熱帯フルーツを、最も食べ頃の状態で日本の食卓へ届けることが可能になった。商務省の幹部は「今後はJTEPAの枠組みをさらに深掘りし、日本企業の技術指導を通じたスマート農業の導入を加速させる」と語る。地政学リスクによる食料安全保障への懸念が高まる中、日本の「補完的な供給源」としてのタイの重要性は一段と高まっている。