
タイ法務省矯正局は、タクシン・チナワット元首相を5月11日に仮釈放する方針を固めた。タクシン氏は2025年9月からバンコクのクロンプレム中央刑務所で服役しており、禁錮1年の刑期のうち、仮釈放に必要な3分の2を満たす。76歳と高齢で、再犯リスクが低いことなども判断材料となった。出所後は刑期満了まで保護観察下に置かれ、定期的な報告や居住地の制限などを受ける見通しだ。
タクシン氏は2006年の軍事クーデターで首相の座を追われた後、国外での事実上の亡命生活を続けた。2023年に帰国し、職権乱用などの罪で当初8年の実刑判決を受けたが、国王恩赦により刑期は1年に短縮された。その後、警察病院で長期療養し、いったん仮釈放されたものの、最高裁は2025年9月、病院滞在を服役期間として認めず、改めて1年の収監を命じた。
今回の仮釈放は、タクシン派政党であるタイ貢献党の求心力回復にも影響を与える可能性がある。タクシン氏は公職に就いていないものの、同党の実質的な後ろ盾とみられてきた。出所後は政治活動に一定の制約が残る一方、支持基盤への発信力はなお大きい。保守派や軍に近い勢力からは、司法・矯正手続きの公平性を問う声も根強く、同氏の処遇はタイ社会の分断を改めて浮き彫りにしている。
タイでは近年、連立政権の枠組みや司法判断を巡り政局が不安定化している。タクシン氏の出所は、表向きは刑務行政上の手続きにすぎないが、実際には次の政局再編を左右する象徴的な節目となる。政財界は、同氏がタイ貢献党の立て直しにどこまで関与するかを注視している。