8人が死亡した踏切事故から3日も経たないうちに、バンコク・マッカサン地区の踏切で再び列車が人を直撃する事故が発生した。5月19日午前、同区内の線路付近で配達業務に従事する男性ライダーが走行中の列車と接触し、重傷を負って病院に搬送された。

現地報道によると、男性はバイクを停め、線路脇で用を足した後に車両へ戻ろうとしていた際、接近する列車に気づかず接触したとみられている。男性は当時、両耳にイヤホンを装着していたとされており、列車の接近音に気づくのが遅れた可能性が指摘されている。事故は午前中に発生し、男性は救急車で近隣病院へ搬送された。警察が詳細を調査中だが、命に別条はないとされている。
事故が起きたのは、5月16日(土)に8人が死亡した大事故と同じマッカサン周辺。わずか3日後に同一エリアで再び踏切絡みの事故が起きたことで、現地ではタイの鉄道安全対策の抜本的な見直しを求める声がさらに高まっている。
3日前に起きた大事故
5月16日午後3時40分ごろ、バンコク・ラーチャテーウィー区のアソーク=ディンデーン通り沿いの踏切(エアポートレールリンク・マッカサン駅直下)で、タイ国鉄(SRT)の貨物列車第2126号がBMTA(バンコク大量輸送公社)の路線バス206番(バンナー=バンケン線)に衝突。バスが炎上し、乗客8人が死亡、30人以上が負傷した。
事故は、渋滞で動けなくなったバスが線路上に停車したまま身動きが取れなくなったところへ、レムチャバン港発バンスー行きのコンテナ貨物列車が進入したことで発生したとみられる。バスの火は周辺の乗用車6台・バイク5台に燃え移り、鎮火まで約1時間を要した。
その後の捜査で、貨物列車の運転士が覚醒剤・大麻を常用していたこと、さらに鉄道輸送の免許を保有していなかったことが判明した。タイ当局によれば、運転士は薬物事件の前科があったにもかかわらず引き続き列車を運転していたとされる。また、当該貨物列車はバンコク市内の昼間通行(午前5時〜午後9時)を禁じる規則に違反していたことも明らかになっており、鉄道当局の管理体制への批判が集中している。
相次ぐ安全問題 今年1月にも28人死亡の鉄道事故
バンコクの鉄道安全をめぐっては、今年1月にも建設クレーンが走行中の旅客列車に倒れかかり、28人が死亡・64人が負傷する大事故がバンコク郊外で起きており、「タイの鉄道システムは老朽化している」との指摘が国内外で繰り返されている。
今回の一連の事故を受け、アヌティン首相は徹底的な原因究明と再発防止策の策定を指示。交通副大臣のシリポン氏も現場に急行し、遮断機の作動状況を含む全面調査を命じた。今後、バンコク市内に残る平面踏切の高架化や安全設備の刷新に向けた議論が加速するとみられる。
補償と今後の手続き
5月16日の大事故について、BMTAは死亡者1人あたり保険金として最大150万バーツ(約750万円)の補償を発表した。負傷者については症状の程度に応じて8万〜50万バーツ、治療費については保険制度を通じて全額対応するとしている。
