タイ経済2026年の「最悪シナリオ」とは?中東紛争・米国関税・家計債務の三重苦で30年ぶりの低成長

数字が全てを物語っている。タイ中央銀行(BOT)が今年の経済成長率予測を1.3%に下方修正した。これは、金融危機や新型コロナウイルス禍を除けば、30年ぶりの低成長だ。さらに中央銀行は「中東紛争が長期化すれば、下限はない」という衝撃的な言葉まで発している。

タイ経済を取り巻く「三重苦」——中東紛争・米国関税・家計債務——は、それぞれが単独でも厄介な問題だ。これが同時に進行している現状は、楽観を許さない。

第1の壁:中東紛争による観光・航空の打撃

タイのGDPの約10〜15%を占める観光業が、中東危機で直撃を受けている。航空燃料費が前年比80%超に急騰した影響で、アジア〜欧州・中東路線を中心に930万席が削減された。これにより外国人観光客数は2026年第2四半期に9.2%の減少が見込まれる。

観光業の裾野は広い。ホテル、飲食店、タクシー、土産品店、マッサージ店——多くの零細業者が観光客に依存しており、その落ち込みは直ちに生活水準の低下として庶民に跳ね返ってくる。

第2の壁:米国関税による輸出の打撃

タイは輸出志向型の経済だが、米国からの関税引き上げが輸出競争力を蝕んでいる。電子部品、自動車部品、ゴム製品など主要輸出品目が影響を受けており、製造業への投資意欲も慎重化している。タイはEUや韓国との自由貿易協定(FTA)交渉を加速させ、米国依存からの脱却を急いでいるが、交渉の妥結には時間がかかる。

第3の壁:高止まりする家計債務

タイの家計債務はGDP比で約90%に達しており、個人消費を強く圧迫している。物価上昇と実質賃金の伸び悩みが重なり、タイの一般市民の購買力は低下の一途だ。アヌティン政権は緊急借入令(4,000億バーツ)による現金給付(最大4,000バーツ)で消費底上げを図っているが、「焼け石に水」との見方もある。

経済専門家は「三重苦のうち一つでも解決すれば反転のきっかけになる」と語る一方で、「全てが同時進行している現状では、2026年のGDP成長率が0.5%台まで落ちる可能性も否定できない」と警告する。ベトナムに追い越される日が来るとの声も聞かれる。

明るいシナリオも存在する。AI・データセンターへの外資投資が拡大し、EV産業が根付き、観光が回復すれば、2027〜2028年には3%台の成長も視野に入る。しかしそれは複数条件が重なってこそだ。

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