タイの運輸省が、公共交通の車両およそ60万台をEV(電気自動車)へ転換する計画を打ち出した。財源に充てるのは、下院を通過したばかりの4000億バーツのエネルギー緊急融資勅令。石油価格の変動に振り回される構造そのものを変える、というのが狙いだ。
シリポン・アンクスクンケアット運輸副大臣は「いま必要なのは、世界的な石油危機に対抗するための包括的な視点だ」と述べ、価格の一時的な固定ではなく、恒久的なエネルギー転換が必要だとの認識を示した。
対象は7グループ
計画が対象とするのは、7つの車両グループだ。
タクシーが2万9000台(2026年から2029年にかけて使用期限を迎える車両)。登録済みの小型乗用車(rr.18区分)が259台。バイクタクシーが6万8000台で、いずれも使用年数10年を超えたもの。三輪タクシー(トゥクトゥクなど)が1万5000台、こちらも10年超。路線バスが1万2000台で、うち6200台は車齢30年を超える。観光バスが1万1000台で、全数が車齢30年超。そしてスクールバスがおよそ4700台、いずれも10年経過済みだ。
明示された合計はおよそ16万2000台で、残りは回収トラックなどを含む見込みとされている。
植樹1900万本分のCO2削減
環境効果の試算も示された。対象車両の50%が転換に参加した場合、年間で24万4000トンのCO2削減が見込まれる。これは植樹1100万本分に相当する。100%が参加すれば、削減量は植樹1900万本分に達する計算だ。
燃料面では、年間2億1200万リットルの石油消費削減が見込まれる。タイは原油の大半を輸入に依存しており、燃料補助金は長年にわたって財政の重荷になってきた。
ただし課題も多い。タイのバイクタクシー運転手や個人タクシー事業者の多くは、車両を自己所有かリースで運用しており、EVへの買い替え負担をどう分担するかが最大の論点になる。加えて、バンコク近郊の充電インフラは商業施設や高級コンドミニアム中心で、路上営業を続ける運転手が日中に充電できる環境は整っていない。
タイの新車販売ではすでにBEV(バッテリーEV)が前年同期比97%増と急伸し、中国系メーカーの現地生産も広がっている。供給側の準備は進みつつある。問題は、1日1000バーツ前後の稼ぎでバイクを走らせる人たちが、その列に並べるかどうかだ。