
渋滞のスワンナプーム空港線に、新しい選択肢が加わる。全長15.8キロの新高速道路「シーナカリン〜スワンナプーム空港線」だ。通行料は普通車で60バーツ。短縮できる時間は25〜30分——さて、この取引は得なのか損なのか。
タイ高速道路公社(กทพ.)が進めるこのプロジェクトは、総事業費200億バーツ超。バンコク東部のシーナカリン通りから、スワンナプーム空港へ直接乗り入れる高架路線である。
料金は車種別、5年ごとに改定
公表されている通行料は以下の通りだ。
- 4輪車:60バーツ
- 6〜10輪車:90バーツ
- 10輪超:120バーツ
料金は5年ごとに見直される仕組みになっている。開業初年度の交通量は1日あたり約6万8,000台、30年目には9万台に達すると予測されている。
この路線の最大の狙いは、既存のモーターウェイ7号線(M7)に集中している空港アクセス交通を分散させることだ。M7は朝夕のラッシュ時に慢性的な渋滞を起こしており、フライトに間に合わなくなるリスクが旅行者の間で語り草になっている。
日本人旅行者にとっての現実的な意味
スクンビット周辺やトンロー、プロンポンといった日本人居住エリアから空港へ向かう場合、現状ではチャルームマハーナコン高速からバーンナー・トラート方面へ抜けるルートが一般的だ。新線が開通すれば、シーナカリン通り経由という第2ルートが生まれることになる。
「空港まで30分早く着くために60バーツ」——タクシー料金の相場からすれば、決して高い買い物ではない。特に早朝便や夕方の帰国便を利用する場合、渋滞に巻き込まれる確率を下げられる意味は大きい。
ただし、注意点もある。この路線はまだ建設段階であり、供用開始は2030年代前半が見込まれている。今すぐ使えるわけではない。
用地収用という積年の課題
プロジェクトが長年にわたり足踏みしてきた最大の理由が、用地収用だった。路線が通る一帯は住宅と商業施設が密集しており、対象となる住民との交渉が難航してきた経緯がある。
高速道路公社は民間資本を活用したPPP方式を採用し、30年間の運営権を民間に委ねる計画だ。同期間の収入見込みは7兆2,000億バーツ規模とされる。
空港へのアクセスは、その国の観光インフラの顔である。バンコクを訪れる旅行者が最初と最後に見る風景が延々と続くテールランプの列では、いくら微笑みの国を名乗っても説得力に欠ける。60バーツで買える30分が、そう遠くない未来に届くことを期待したい。