スポンサーリンク
スポンサーリンク

タイのウェルネス観光、世界の成長率ランキングで首位に

タイのウェルネス(健康志向)観光市場が急速な拡大を続けており、その「伸び率」が世界トップ級だとする分析が国内で相次いで報じられた。医療ツーリズムやスパ、健康リトリートといった分野が海外からの旅行者需要を牽引しており、タイは観光立国としての新たな柱を築きつつある。ただし「世界一」という評価が具体的に何を指すのかは、引用する調査や時点によって数字が異なるため、根拠を整理して補足する。

根拠は米調査機関GWIのデータ、「1位」は成長率の一部指標

今回の「世界一」報道の出どころは、タイの医療グループBDMSの関連企業であるBDMSウェルネス・クリニック最高経営責任者、タヌポン・ウィルンハガルン氏が「Beyond ESG: Thailand Transition」と題したセミナーの分科会「Wellness x Longevity: The Next Growth Engine」で示したデータだ。同氏は、世界のウェルネス市場調査を手がける米NPO「グローバル・ウェルネス・インスティテュート(GWI)」の統計を引用し、タイのウェルネス市場が2022年の約300億ドルから2023年には約400億ドルへと1年で拡大し、年間成長率は28%に達したと説明した。世界全体の平均成長率(約7.6%)と比べて約4倍の速さで、この「伸び率」を基準にすればタイは世界1位の水準にあるという趣旨の発言だった。

一方、GWIが2026年に公表した最新の「Global Wellness Economy: Country Ranking Report」(2023〜2024年データに基づく)では、タイのウェルネス市場規模は2023年の388億ドルから2024年に427億ドルへ、10.1%増加したとされる。この最新データでは、タイは市場規模で世界24位、アジア太平洋地域では9位にとどまり、成長率でも上位25カ国中7位という順位が示されている。細分野別に見ると、ウェルネス観光(医療ツーリズムやスパ目的の渡航)は前年比36.4%成長し140億ドル規模に達したが、市場規模そのものは世界15位である。GWIチェア兼CEOのスージー・エリス氏は「タイが42.7億ドル規模の市場に成長し、二桁の伸びを達成したことは、健康への文化的な価値観と、イノベーション・予防医療への投資が実を結んだ結果だ」とコメントしている。

つまり「世界の成長率ランキングで首位」という表現は、2022〜2023年の年間成長率(28%)を基準にした比較に基づくもので、直近のGWI公式ランキング(2023〜2024年データ)では、タイは市場規模で24位、成長率でも上位25カ国中7位、ウェルネス観光の細分野に絞っても36.4%成長・世界15位という位置づけになる。調査時点や比較対象の区切り方によって「1位」の意味合いが変わる点には注意が必要だ。

目標は世界トップ5、ライバルは日本・インド・シンガポールなど

タイ政府や業界関係者が掲げる目標は、ウェルネス観光の分野で世界トップ5の拠点に入ることだ。タヌポン氏はセミナーで、その実現のためにはアジアの主要なウェルネス観光地との競争に打ち勝つ必要があると指摘し、具体的なライバルとして日本、インド、シンガポール、マレーシア、そしてインドネシアのバリ島や欧州各国の名を挙げた。日本は健康診断や温泉療養、インドはヨガやアーユルヴェーダ、シンガポールは高度医療、バリ島はリトリート型の癒やしという、それぞれ異なる強みを持つ競合として位置づけられている。

なお、国・地域別の詳細な「トップ10」順位表はGWIの公表資料では確認できなかった。GWIのランキングは市場規模・成長率・地域別など複数の切り口で公開されており、単純な総合順位表は存在しない点も補足しておきたい。

ウェルネス観光とは何か

ウェルネス観光とは、単なる観光や娯楽にとどまらず、心身の健康増進やリフレッシュを目的とした旅行の総称である。タイでは古くからタイ古式マッサージやハーブを使った伝統療法が根付いており、これに現代的な医療技術や高級スパ施設が組み合わさることで、独自の観光資源として発展してきた。バンコクやプーケット、チェンマイなどには国際基準の医療機関と高級リゾート型スパが集積しており、健康診断や美容医療を目的に渡航する外国人旅行者を長年受け入れてきた実績がある。

日本人旅行者にとっての魅力

日本からタイを訪れる旅行者にとっても、ウェルネス分野は関心の高いテーマの一つとなっている。バンコクなど主要都市には、日本語対応が可能なスパやマッサージ店、健康診断を受けられる医療機関が多く存在し、通常の観光と組み合わせて健康チェックやリラクゼーションを楽しむ旅行スタイルが定着しつつある。タイ古式マッサージやハーブボールを使ったトリートメントは、日本人観光客にも根強い人気を持つメニューであり、比較的手頃な価格で本格的な施術を受けられる点も魅力とされている。

今回報じられた「成長率世界一」という評価は、特定のイベントや施設単体の話ではなく、タイ観光産業全体がウェルネス分野へと軸足を広げつつあることを示すものだ。数字の切り取り方によって順位の見え方は変わるものの、医療・スパ・健康リトリートを組み合わせた旅行需要が急拡大している実態そのものは、複数の調査で共通して確認できる。今後もタイ観光の重要なトレンドとして注目される。

タイトルとURLをコピーしました