
世界遺産の余韻が、意外な形で現れた。ナコンシータマラート県のワット・プラマハータート・ウォラマハーウィハーンがユネスコの世界文化遺産に登録されたことを受け、同寺にゆかりのある古代護符「フアナモ」の価格が急騰。当局が7月30日、意図的な価格つり上げに警告を発した。
「フアナモ」とは何か
フアナモは、ナコンシータマラート地方で古くから伝わる小さな金属製の護符だ。丸みを帯びた独特の形状をしており、かつては貨幣としても用いられたとされる。地元では魔除け・招福の象徴として大切にされ、収集家の間でも一定の人気があった。
その相場が、世界遺産登録を境に跳ね上がった。「登録記念」を謳った販売や、真贋の怪しい品の流通も出始めているという。
当局が釘を刺した理由
県当局が警告に踏み切ったのは、投機的な値動きが地域の信仰そのものを損ないかねないと判断したためだ。護符は本来、信仰と結びついた文化財である。それが投資商品のように扱われれば、偽物が出回り、詐欺被害が生まれ、最終的に信頼が失われる。
タイでは護符(プラクルアン)市場が長い歴史を持つ一方、価格操作や贋作をめぐるトラブルも絶えない。ラーチャブリーの寺で古壺からプラソムデット623体が発見された際も、真贋と価値をめぐる議論が起きた。当局の警戒は、その経験に裏打ちされている。
タイ9件目、南部からは初
ワット・プラマハータートの登録は、タイにとって9件目の世界遺産であり、南部からは初めての快挙となった。仏塔を中心とした寺院建築群は、スリランカ様式の影響を受けた独特の構成で知られる。
登録により、これまで国内向けだった同寺への関心は一気に国際化した。地元では宿泊施設や交通の受け入れ体制の整備が急務となっている。
日本人旅行者が訪ねるなら
ナコンシータマラートはバンコクから空路で約1時間15分。南部の中核都市でありながら、これまで日本人旅行者にはあまり知られていなかった。世界遺産登録を機に注目される可能性は高い。
寺院を訪ねる際は、肩と膝を覆う服装が基本。境内での撮影可否は場所により異なるため、掲示を確認したい。護符を買い求める場合は、露店の「世界遺産価格」に飛びつかず、信頼できる寺務所や正規の窓口を選ぶのが無難だ。
——文化遺産の価値は、値札に書かれていないところにこそある。
