パスポートさえあれば飛行機に乗れた——その常識が、8月3日から変わった。スワンナプーム空港の出国審査ブースで、タイ国籍の18歳未満の子どもについて、出生証明書(スーティバット)の提示を求める新しい取り扱いが始まった。
発表したのはスワンナプーム空港入国管理検問所の出国審査部門。対象は、タイ国籍で満18歳未満の子ども全員だ。父、母、あるいは同行するその他の人物が、審査官に対して次の書類を示す必要がある。
求められる2種類の書類
ひとつは出生証明書。原本のほか、コピー、さらにはスマートフォンで撮影した電子データの画像でもよいとされている。もうひとつが、父または母、あるいはその双方による同意書だ。こちらは行政機関が発行したものであることが条件になる。
これまでタイ国籍の18歳未満の子どもは、パスポートのみで出国することができた。今回の措置で、事実上の追加確認が1段階増えたことになる。
狙いは「連れ出し」の防止
入管側は、この変更の理由を明確に示している。子どもの最善の利益を守ること、そして父母や法定の親権者の同意なしに、子どもが不当に国外へ連れ出されるのを防ぐことだ。
国際的な子の連れ去りや、人身取引を目的とした越境は、東南アジアでは長く問題視されてきた。パスポートだけで通過できる仕組みでは、審査官が家族関係を確認する手立てがない。出生証明書を挟むことで、その空白を埋める狙いがある。
タイ在住の日本人家庭にも関係する
注意したいのは、この措置の対象が「タイ国籍の子ども」である点だ。日タイ間の国際結婚家庭では、子どもがタイ国籍を保持しているケースが少なくない。そうした家庭が日本へ一時帰国する際も、タイ国籍で出国する以上は対象になりうる。
特に、片方の親だけが子どもを連れて出国する場合は、もう一方の親の同意書を役所で用意しておく必要が出てくる。空港のカウンターで用意できる類の書類ではないため、事前準備が欠かせない。
電子データでも可、という現実的な線引き
救いは、出生証明書について原本にこだわっていない点だろう。コピーでも、スマホの写真でも受け付けるとされている。渡航のたびに原本を持ち歩けば紛失のリスクが高いだけに、この運用は現実的だ。ただし同意書のほうは行政機関発行が条件であり、こちらは事前の取得が必須になる。
タイの入管をめぐっては、外国人向けの事前登録アプリ「THIM」の導入など、この夏に手続きの変更が相次いでいる。出発前に最新の要件を確認しておく習慣が、これまで以上に重要になってきた。
空港のカウンターで「書類が足りません」と言われて引き返す——夏休みにいちばん味わいたくない体験である。子連れでタイを出るなら、パスポートの隣に、もう1枚を入れておきたい。
