行ったこともない場所での、身に覚えのない交通違反。その通知が、6月から何度もポーンパンさんの手元に届いた。犯人は、彼女の車と同じナンバープレートを付けた別の車だった。
8月21日午後1時40分ごろ、ブリーラム県ノンキー郡の信号待ちの列で、ハイウェイ警察がグレーのMG4電気自動車を止めた。付けられていたのは、バンコク登録の「4ขร 9868」。本物と同じ番号の、偽物である。
運転していたのは、スリン県出身のナッタワット・サッチャナーノン容疑者(53)。公文書偽造および同行使の疑いで身柄を押さえられた。
「私の車は、あんな場所へ行ったことがない」
被害を受けたポーンパンさんは、7月下旬にナコンラチャシマのハイウェイ警察へ相談に出向いていた。6月から違反通知が届き始め、枚数は積み上がる一方だったからだ。
彼女の訴えは一貫していた。「私の車は、そんな場所へ行ったことが一度もない」。写真に写った車種も、色も、自分の車とは違う。それでもナンバーは自分のものだった。
本人によれば、精神的な負担は相当なものだったという。違反点数は自分の免許に積まれ、放置すれば督促が来る。説明しようにも、証明する手立てがない。
なぜ偽ナンバーを付けるのか
偽造プレートの動機はいくつかある。違反金や通行料の逃れ、盗難車の素性隠し、あるいは車の登録上の問題を回避するためだ。今回のケースで容疑者が何を狙っていたのかは、捜査で明らかにされる。
ハイウェイ警察は、同じ被害に遭った人への注意も呼びかけた。「違反通知に書かれた発行機関へ直接連絡してほしい。SNSに投稿すると、犯人に気付かれて逃げられる恐れがある」。
もっともな助言である。タイではSNSでの告発が事件解決の糸口になることも多いが、今回のように相手が特定できていない段階では、逆効果になりかねない。
電気自動車に偽プレート、という時代
今回押さえられたのがMG4という電気自動車だった点も、タイらしい。同国では中国系ブランドのEVが急速に普及し、街中で見ない日はない。台数が増えれば、同じ車種・同じ色の車も増える。偽プレートが紛れ込む余地も、その分だけ広がる。
SNSでは「自分にも身に覚えのない通知が来たことがある」「ナンバーだけで判断されるのが怖い」といった趣旨の書き込みが並んだ。
ポーンパンさんに届いた違反通知の山は、これから一枚ずつ取り消されることになるだろう。ただ、その手続きにかかる手間と時間は、誰も返してくれない。