王室特赦による完全釈放からわずか数日。タクシン・チナワット元首相(76)が今度は「税金」という新たな火種に直面している。タイ国税局は、タクシン氏に対し総額約176億バーツ(約760億円)の追徴課税を通告。「期限までに支払いがなければ、破産裁判所への申請も辞さない」という最後通牒を突きつけた。
課税の対象となっているのは、タクシン氏が首相在任期間中に関与したとされる複数の株式売買取引と企業配当収入。国税局によると、これらの取引における所得税の申告漏れ・過少申告が問題視されており、本税に延滞税と加算税を加えた総額が176億バーツに上るとしている。
これに対してタクシン氏側の弁護団は「課税の根拠には法的疑義がある。適正な法的手続きを通じて対応する」と争う姿勢を示した。弁護士の一人は「すでに政治的な問題として解決した事案を税務当局が再び持ち出すことには問題がある」と主張している。
タイの税務・法律専門家は「仮に破産申請がなされた場合、タクシン氏の国内資産は凍結対象となる可能性がある。政治的影響力を持ち続けてきた同氏にとって、財産上の制約は政治活動にも影響を及ぼしかねない」と分析する。
タイ与党「タイ貢献党(プア・タイ党)」の幹部らはこの問題についてコメントを控えているが、野党側からは「これは法の下の平等を示す正当な課税処理なのか、国民は注視している」と指摘する声が上がっている。タイ政界の動向を見守る日本の外交筋からも「タクシン氏を巡る状況は引き続き予断を許さない」との見方が出ている。