
畑に植えられていたタロイモ(サトイモ科の芋)を無断で掘り出し、売って金に換えた男が窃盗の疑いで警察に取り調べを受けている。動機を尋ねられた男は「生まれたばかりの赤ん坊に飲ませる粉ミルクを買うお金がどうしても必要だった」と打ち明けたという。
男の年齢や具体的な家族構成は詳細不明だが、警察署には3人の幼い子どもを連れた妻が面会に訪れ、夫の姿を見るなり涙を流した。取り調べにあたった警察官は「事情を聞けば聞くほど胸が痛んだ。だが窃盗は窃盗であり、被害届が出ている以上、法に基づいて手続きを進めざるを得ない」と複雑な胸中を明かした。
「情状酌量の余地はある」との声も
タイの法律では、他人の畑から農作物を持ち出す行為は単純な万引きよりも重い「田畑荒らし」に類する罪として扱われる場合があり、今回の件でも男は窃盗罪より重い量刑を科される可能性があるという。地元では「生活に困っての犯行であり、情状酌量の余地があるのでは」という同情の声がある一方、「農家にとっては死活問題」と被害農家に理解を示す意見も根強い。
SNS上では「子どものために手を出してしまう気持ちは分かるが、まず相談窓口を頼ってほしかった」「タイの生活困窮世帯への支援制度が足りていないのでは」「この家族に対する寄付を募りたい」といった書き込みが広がっている。
被害農家「盗まれた分は仕方ないが」
畑の持ち主である農家は「盗まれたものは仕方がないが、せめて事前に相談してくれたら」と複雑な心境を語った。地元の福祉担当者は今回の件を受け、困窮世帯向けの緊急支援制度の利用を家族に案内する方針だという。幼い命を守るために芋を盗んだ父親の姿は、タイ社会に横たわる貧困の現実を改めて浮き彫りにした。
子どもたちの将来を思えばこそ手を染めてしまった今回の一件は、タイ社会が抱える所得格差やセーフティーネットの薄さを映す縮図でもある。
