
ドアの鍵さえかけていれば、彼女は今も生きていたかもしれない。タイ東北部ウドンタニ県ムアン郡バーンルアム地区の安アパートの一室で9月15日、24歳の女性店員が全裸のまま冷たくなっているのが見つかった。首には黒い電線が固く巻きつけられていた。
発見されたのはパッタラリン(仮名)さん、24歳。地元のコンビニエンスストアで3年間まじめに働いてきた従業員だった。同僚に問題を起こしたことは一度もなく、交際相手もいなかったという。
「毎日のように鍵をかけてと言っていたのに」
第一発見者は数日間連絡が取れないことを不審に思った友人だった。部屋のドアを開けた瞬間、床に横たわる彼女の姿が目に飛び込んできた。「独身で彼氏もいなかった。仕事でもトラブルなんて一度もなかった」。友人はそう振り返った上で、声を震わせながらこう続けた。「ただ、寝るときにドアの鍵をかけないクセがあったんです。危ないから毎日のように注意していたのに」。
検視の結果、死後およそ20時間が経過していたとみられている。夜勤明けで疲れて眠りについたところを、鍵のかかっていないドアから侵入されたのではないか――現場に居合わせた住民の間では、そうした憶測がささやかれた。
トイレで鉢合わせた末の犯行か
ウドンタニ県警の捜査担当者は、遺体の状況や部屋の乱れ具合から一つの見立てを示している。「被害者がトイレを使用している最中に侵入者と鉢合わせし、抵抗した末に絞殺された可能性が高いとみている」。室内には物色されたような跡もあり、物取り目的が発端だった可能性も排除していないという。
警察は現場に残された指紋や体液、そしてアパート周辺の防犯カメラ映像の解析を急いでいる。「CCTVを含むあらゆる証拠を精査し、24時間以内の犯行者の足取りを特定する」と捜査幹部は述べ、近隣住民への聞き込みも並行して進めていることを明らかにした。
「またコンビニ店員が」広がる不安
タイでは深夜勤務のコンビニ店員が事件に巻き込まれるケースがたびたび報じられており、SNS上では「夜勤の女性店員は本当に危険と隣り合わせだ」「一人暮らしなら二重ロックが必須では」といった趣旨の投稿が相次いだ。中には「これでまた”鍵をかけて”と言われる側が悪いことにされてしまうのが嫌だ」と、被害者への配慮を求める声も見られたという。
パッタラリンさんの遺体は司法解剖のため運ばれ、家族への連絡が進められている。同僚だった女性は「本当に明るくて、誰にでも優しい子でした」と力なく語った。ドア一枚の油断が、20代の命を奪う結果になった。彼女が最後に見たのは、いつもの見慣れた部屋の天井だったのだろうか。