アニメでもゲームでもない。日本が次に海外へ売り込もうとしているのは、「リーグ」そのものだった。バレーボール、バスケットボール、卓球——この3競技のプロリーグを、日本はアジア各国に輸出しようとしている。プラチャーチャート・トゥラキット紙が報じたこの動きは、タイのスポーツ市場にとっても無視できない話だ。
同紙によると、バレーボール、バスケットボール、卓球は日本にとって「最新の輸出型ソフトパワー」になりつつある。日本側の狙いは、これらのリーグを海外で認知させ、入場チケット収入とスポンサー資金の両方から収益を得ること。さらに、世界的なリーグと肩を並べるところまでポジションを引き上げることだという。
なぜバレーとバスケなのか
サッカーではない、という点が興味深い。日本のJリーグはすでにアジア各国で放映されているが、欧州リーグという圧倒的な競合が存在する。一方、バレーボールとバスケットボールは、アジア圏で人気が高いにもかかわらず、「世界最高峰」として確立されたリーグが少ない。ここに空席がある、というのが日本側の読みだ。
特にバレーボールは、タイでの人気が突出している。タイ女子バレー代表は東南アジアの盟主であり、国際大会があればテレビの視聴率は跳ね上がる。デイリーニュースやコムチャットルックは8月2日、SEA V Cup 2026のタイ対ベトナム戦のライブ配信情報を主として扱っていた。バレーボールがタイでどれほど生活に食い込んでいるかを示す一例だ。
タイ市場という試金石
日本のリーグにとって、タイは理想的なテストマーケットである。第1に、バレーボールの競技人口と視聴者層がすでに厚い。第2に、日本のコンテンツに対する好意的な受容が定着している。第3に、日本の消費財ブランドがスポンサーとして参入しやすい環境がある。
実際、タイのスポーツ現場にはすでに日本企業の名前が並ぶ。マティチョンは8月1日、ホンダがサテライトチームを支援し、タイのライダーがBRIC Superbike第2戦に挑む体制を整えたと報じている。自動車メーカーがモータースポーツで築いてきた「現地に根を張る」やり方を、いま球技リーグが追いかけようとしている構図だ。
ソフトパワーの通貨は「日常」
アニメやマンガによる日本のソフトパワーは、すでにタイの若年層に深く浸透している。だが、アニメの視聴は個人的な体験にとどまりやすい。これに対しスポーツリーグは、チーム、選手、シーズン、地元スポンサーという形で「日常の会話」に入り込む。一度定着すれば、コンテンツより息が長い。
もっとも課題も多い。放映権をどこに売るか、現地の既存リーグとどう共存するか、時差と放送枠をどう確保するか——いずれも一朝一夕には解けない。タイにはすでに独自のバレーボールリーグとバスケットボールリーグが存在し、それを押しのける形になれば反発も招く。
それでも、日本が「作品」ではなく「仕組み」を輸出しはじめたという事実は象徴的だ。アニメを売るのは1回きりだが、リーグを売れば毎シーズン売れる。ビジネスとしては、はるかに賢いやり方である。