
タイのアイスクリームブランド「ハーウェルズ(Hawell’s)」が、事業まるごと1億6500万バーツで売りに出された。売却を発表したのは、ハーウェルズ・インターナショナル社の会長で創業者のシリポン・アッカシーユック博士。8月22日のことである。
売却の理由が、いかにもタイらしい。創業者は2年後に出家し、修行に専念する予定なのだという。事業を継ぐ人ではなく、事業を買う人を探している。
売られるのは、6つの要素すべて
提示された内容は明快だ。1億6500万バーツで手に入るのは、次の6つになる。
- バンブアトーン地区の土地7ライ(評価額1億バーツ)
- オフィス棟と、機械設備・各種許認可を備えた工場(4000万バーツ)
- ハーウェルズ・アイスクリーム&ファストフード店(600万バーツ)
- ハーウェルズのブランドおよび商標
- 37年分の製造ノウハウ一式
- ソフト・ハード両方のアイスクリーム全レシピ
紹介者への謝礼として500万バーツも用意されている。
7ライは約1万1200平方メートル。バンブアトーンはバンコク北西のノンタブリ県にあり、都心から車で40分ほどの工業・住宅混在エリアだ。土地だけで評価額1億バーツというのは、この立地なら不自然な数字ではない。
2年で22店舗まで広げたブランド
ハーウェルズは約25年にわたって営業してきた。立ち上げから2年で22店舗まで拡大した実績を持つ。創業者は自社製品への自負を隠さない。「ハーウェルズには、どのアイスクリームブランドとも戦えるだけのものがすべてそろっている」。
ノウハウが「37年分」とされ、ブランドの営業が「約25年」とされているのは、創業者個人の製造経験が会社設立より前にさかのぼるためとみられる。
レシピごと売るという発想
日本の感覚では、レシピと商標を含めた一括売却は珍しく映るかもしれない。ただタイでは、飲食ブランドを「パッケージ」として売買する取引は比較的よく見られる。土地・工場・許認可・レシピをまとめて渡し、買い手はその日から製造を始められる。
とりわけ食品工場の許認可は、新規取得に時間がかかる。既存の許認可付き工場を丸ごと買えるという点は、参入を考える事業者にとって大きな意味を持つ。
タイのアイスクリーム市場は、外資系プレミアムブランドと、屋台価格帯のローカルブランドに二極化している。ハーウェルズはその中間、地元密着型の位置にあった。
買い手が現れれば、ブランドは残る。現れなければ、25年の看板は創業者の出家とともに静かに畳まれることになる。1億6500万バーツ、日本円でおよそ7億5000万円。安いか高いかを決めるのは、次の経営者だ。