
米国が通商法301条に基づきタイ製品に課した追加関税をめぐり、実害は当初の想定より小さくなる可能性が出てきた。除外品目が2,120品目にのぼり、タイの対米輸出額の半分以上をカバーすることが判明したためだ。
タイ商務省のスパジー商務相が7月28日に明らかにした内容によると、米国がタイに適用する301条関税率は12.5%。これまで通商法122条に基づき課されていた10%からの上乗せ幅は2.5ポイントにとどまる。
除外リストに主力輸出品がずらり
注目すべきは除外品目の顔ぶれだ。追加関税の対象外となったのは以下のような品目である。
- 集積回路(IC)
- ハードディスクドライブ(HDD)などの記憶装置
- 航空機部品
- 天然ゴム、シートゴム・ブロックゴム
- タピオカでん粉
- 生鮮・加工パイナップル
- 生鮮・乾燥果実
- 生鮮ココナッツ、ココナッツウォーター
- サトウキビ由来の砂糖
タイの対米輸出を牽引してきた電子部品と農産加工品が、そろって除外リストに載った形だ。商務省は「除外品目は対米輸出額の半分以上を占める」と説明している。
「競合国も同じ12.5%」商工会議所は冷静
タイ商工会議所会頭は、タイと競合する国々も同じ12.5%の税率が適用される点を指摘し、「米国市場での競争条件は変わらない」との見方を示した。関税は輸出企業にとって痛手だが、相対的な競争力が落ちるわけではないという理屈だ。
一方、学術界からはより厳しい試算も出ている。追加関税が対米輸出全体に波及した場合、影響額は1兆バーツ規模に達しうるという指摘だ。除外品目があるとはいえ、繊維、履物、家具、加工食品の一部などは直撃を受ける。
次の焦点は「ART」交渉
スパジー商務相は7月15日から17日にかけて訪米し、301条・122条をめぐる協議を行った。現在の焦点は、包括的な通商枠組み「ART(相互貿易協定)」の妥結だ。
商務相は「国益と引き換えにする取引はしない。越えられない一線はある」と述べ、譲歩の範囲に明確な限度があることを強調した。同時に、影響を受ける輸出企業への支援策を早急に打ち出す考えも示している。
タイの2026年下半期の輸出は減速が予想される一方、電子部品分野は堅調を維持するとの見通しが優勢だ。除外リストに載ったICとHDDが、皮肉にもタイ経済の「防波堤」として機能することになる。
関税交渉は、痛みの総量ではなく痛みの配分をめぐる争いでもある。2,120品目の外側に置かれた産業が、これから声を上げ始めるはずだ。