
タイ・バンコクの証券取引所(SET)で、相場の目線が米国の物価指標に集まっている。SET指数は前日の取引を1614.36ポイントで終え、前日比0.11%の小幅高となった。市場関係者が想定するその後のレンジは1600〜1630ポイントである。
方向感を決めたのは、タイ国内の材料ではなく米国の生産者物価指数(PPI)だった。7月のPPIは前年同月比4.7%の上昇にとどまり、6月の5.5%から鈍化。市場予想の4.9%も下回った。
利上げ確率は64%から34.9%へ
この弱いインフレ指標を受けて、市場が織り込む9月の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ確率は、64%から34.9%へと大きく低下した。金融引き締めの警戒が後退すれば、新興国株を含むリスク資産には資金が向かいやすくなる。タイ株にとっては素直な追い風である。
タイ株は8月に入って上下を繰り返してきた。外国人投資家の売り越しが続く局面では小口投資家の買いが下支えし、指数は1600ポイント台前半での攻防が続いている。今回の米国指標は、その膠着に方向性を与える材料と受け止められた。
注目はアマタとAP
個別銘柄では、工業団地開発大手のアマタ・コーポレーション(AMATA)が注目を集めている。第2四半期の利益は前年同期比で1032%増と急拡大し、市場予想を38%上回った。証券各社が示す基準株価は35.00バーツである。
不動産開発のAP(タイランド)も名前が挙がる。第2四半期の利益は前年同期比6%増と堅調で、配当利回りが6%を超える点が評価されている。金利警戒が和らぐ局面では、高配当銘柄への関心が高まりやすい。
タイ企業全体の第2四半期決算は、おおむね堅調に推移しているとの見方が優勢だ。加えて、スマート&サステナブル産業に関連する投資額が1兆4600億バーツに達しているとされ、自動化やグリーン産業に関わる銘柄には中期的な追い風が続く。
国内要因は依然として重い
ただし、タイ株の上値を抑える国内要因も残る。米国との関税交渉の行方、バーツの為替動向、そして観光収入の伸び悩みである。カシコン研究センターは2026年の外国人観光客数を前年比4.9%減の3136万人と予測しており、観光関連銘柄には慎重な見方が残る。
外部環境が改善しても、内需の回復が伴わなければ指数は上のレンジを抜けきれない。1630ポイントという上限は、その慎重さを反映した数字でもある。
タイ株の当面の焦点は、米国の物価指標が示した方向が続くかどうかに移る。バンコクの相場が見ているのは、いまのところワシントンの数字である。