
コックピットから、高架下へ。バンコクのBTSプルンチット駅の下で暮らしていた男性が、かつてフィリピンの航空会社で機長を務めていた人物だったことが分かり、タイのSNSが騒然となっている。7月29日夜、経済メディア「クルンテープ・トゥラキット」が本人の証言を報じた。
操縦桿を握っていた男に何が起きたのか
男性はフィリピン国籍。旅客機の機長という、この地域では屈指の高給職に就いていた。人生が反転したきっかけは株式投資だったという。稼いだ資金を市場に投じ、含み損が膨らみ、取り返そうとしてさらに深追いする——投資で身を持ち崩す典型的な経路をたどった。
最終的に手元に残ったものはほとんどなく、バンコクの繁華街の一角、BTS高架の下が寝床になった。年齢や渡航の経緯など、詳細な部分は本人が明かしておらず不明のままだ。
タイの個人投資家が我が身に重ねた
この話がこれほど拡散したのには理由がある。タイ市場は今、決して穏やかではない。SET指数は7月30日に26.36ポイント安と大きく崩れ、心理的節目の1600を割り込んだ。時価総額最大級のDELTAが1銘柄で指数を約20ポイント押し下げるという、極端な相場が続いている。
投稿には切実な言葉が並んだ。「他人事じゃない。自分も含み損を抱えている」「レバレッジをかけた瞬間に人生が賭けになる」「元機長でもこうなるなら、素人が勝てるわけがない」。一方で「本人の選択だ」と突き放す声もあり、意見は割れている。
専門家が繰り返す基本
タイの金融教育関係者がこの種の事例で必ず指摘するのは、生活資金と投資資金を完全に分けること、そして損失を取り返そうとする「リベンジ取引」に手を出さないことだ。地味だが、これを守れなかった人が同じ場所に落ちていく。
男性が今後どう再起するのかは分かっていない。ただ、この一件はタイの投資ブームの陰にある現実を、これ以上ないほど分かりやすく突きつけた。空を飛ぶ資格を持つ人でも、相場から落ちるときは受け身が取れないということだ。
