
タイで暮らす、あるいはタイでの生活を検討している外国人にとって「車を持つかどうか」は避けて通れないテーマです。バンコクなら公共交通機関だけでも生活できますが、チェンマイやプーケットのような地方・郊外エリアでは、車がないと通勤や買い物すら不便になることも少なくありません。
結論から言うと、外国人がタイで車を購入すること自体に法律上の制限はありません。パスポートと住所証明書があれば、新車・中古車を問わず自分名義で登録できます。ただし「一括払い」「自動車ローン」「中古車」では必要書類や手続きの難易度がかなり異なります。本記事では、この3つのケースに分けて、購入前の準備から名義登録まで具体的な流れを解説します。
購入前に知っておきたい共通の条件
新車・中古車、支払い方法にかかわらず、外国人が車を自分名義にするために共通して必要になる条件が3つあります。まずここを押さえておくと、後の手続きがスムーズになります。
①運転免許:国際免許かタイの免許か
タイはジュネーブ条約加盟国のため、国際運転免許証があれば運転自体は可能です。短期滞在や移住直後はこれで問題ありませんが、長期居住者はタイの免許への切り替えをおすすめします。日本の免許からの切り替えは、バンコクならチャトゥチャックやバンチャークの陸運局が代表的な窓口で、長期ビザとタイでの3ヶ月以上の居住実績が条件になります。
②ビザ:観光ビザでは名義登録できない
車を運転すること自体は観光ビザでも可能ですが、車を「自分名義」で登録するにはノンイミグラントビザ等の長期ビザが基本的に必要です。観光ビザのまま契約を進めようとするディーラーも稀にありますが、後述の住所証明書が取得できないため、実務上は長期ビザの取得が前提と考えておいた方が安全です。
③住所証明書:3つの取得ルート
登録に必要な書類は基本的に「パスポートのコピー(顔写真ページ+ビザページ)」と「住所証明書」の2点セットです。このうち住所証明書は、以下の3つのルートのいずれかで取得します。
- ルート1:イミグレーションの住居証明書
大家がTM30(外国人居住届)を入居後24時間以内に届け出ていることが前提。TM30の受領証を持参してイミグレーションで申請します。運用がオフィスごとに異なり、必要書類が統一されていない点に注意が必要です。 - ルート2:大使館の在留届出済証明
日本人の場合、事前にORRnetで在留届を提出しておくことが前提条件です。手数料は2026年7月時点で470バーツ(年度により変動)。車の手続きで有効なのは英文の証明書のみで、和文の「在留証明」とは別物なので注意してください。 - ルート3:勤務先の就労証明書
会社員であれば最も早く用意できるルートです。ワークパーミットに現住所が記載されていれば、それ自体を住所証明として使えるケースもあります。
なお、ディーラー経由の購入では、これらの取得をディーラー側が代行してくれることも多く(実費1,500バーツ程度が相場)、個人売買の場合は自分で手配する必要があります。
パターン①:新車購入(一括払い)
審査や保証人が不要なため、外国人にとって最もハードルが低いのがこの「現金一括払い」です。実際、多くの駐在員・移住者がローンではなく一括払いを選んでいます。

購入の流れ
- ディーラーを回り、車種・グレードを選定して試乗する
- 予約金(5,000〜10,000バーツ程度、多くは返金可)を支払う
- タイの新車は受注生産が基本のため、納車まで長いと半年ほど待つこともある
- 残金を支払う(キャッシャーズチェックまたは銀行振込が一般的。多額の現金持参は避ける)
- 登録書類(パスポート写し・住所証明書)をディーラーに提出する
- 納車時に傷・装備・付属品を必ず検品してから受け取る
- まず「赤ナンバー」の仮登録となり、保証金として2,500バーツ程度を預ける(後日返金)
- 数週間後、正式な「白ナンバー」に切り替わり、車検証(ブルーブック)を受け取る
赤ナンバー期間の注意点
赤ナンバーの期間中は、日中のみ・登録した県内のみの走行に限定され、購入書類一式を常に車内に携行する必要があります。夜間走行や県外への長距離移動は白ナンバーへの切り替え後に行いましょう。
一括払いのメリットは、審査・保証人・金利負担がゼロで、手続きがシンプルなことです。一方で、まとまった現金または海外送金の管理・為替コストは自分で背負う必要があります。
パターン②:新車購入(自動車ローン利用)

タイの銀行やファイナンス会社は「ハイヤーパーチェス(分割払い契約)」という形で自動車ローンを提供していますが、外国人にとって審査を通すのは決して簡単ではありません。とはいえ、条件さえ揃えば十分に利用可能です。
基本的な審査条件
- タイ国内の銀行口座:給与振込等の実績があるもの
- ワークパーミット:多くの金融機関は「保有期間1年以上」を目安としますが、高収入かつ安定した勤務先・更新可能な雇用契約があれば、保有1ヶ月程度でも承認された例が報告されています。最終判断は銀行・支店ごとの裁量による部分も大きいです
- タイ人保証人:初回のローンでは基本的に必須。給与証明書、勤続1年以上を示す在職証明書、預金通帳の提示を求められるのが一般的です(同じ金融機関での2回目以降は不要になるケースもあります)
- 頭金:新車の目安は20%前後。新車で最大95%融資(=頭金5%)を謳う銀行もありますが、タイ国内での資金基盤が薄いと判断されると50〜70%の頭金を求められることもあり、その場合でも保証人は別途必要になるケースが多いです
金利と返済期間
金利の目安は年2〜4%で、頭金25%超・返済期間48ヶ月以内などの条件を満たすと1%未満のキャンペーン金利が適用されることもあります。返済期間は24〜84ヶ月が一般的です。ただし、タイのローン契約では稀に「月利」で金利が提示されることがある点に要注意です。例えば「月1.6%」という表示は、単純計算で年利換算すると約20%相当になります。外国人向けの一部ローンでは、実質年利換算で20%を超えるケースも報告されているため、契約前に必ず「年利」ベースでの実質負担額を確認しましょう。
主な取扱金融機関
外国人にも自動車ローンの提供実績があるとされる主な金融機関には、SCB、Krungsri Auto、Tisco、TTB Drive、Bangkok Bank(給与振込口座を条件にした個人ローンを車の購入資金に充てる方法)などがあります。条件は支店・時期によって変わるため、複数行に事前相談することをおすすめします。
タイ人保証人が見つからない場合
最大の壁は「保証人探し」です。配偶者や信頼できるタイ人の同僚・友人に頼めない場合は、①保証人不要のローン商品を扱う金融機関を探す、②頭金を大きく積んで審査のハードルを下げる、③金利は高くなりがちですがディーラー系ファイナンスを利用する、といった代替手段を検討しましょう。
パターン③:中古車購入
初期費用を抑えたい場合に選択肢となるのが中古車です。タイの中古車は日本ほど値落ちが激しくないという特徴もあり、将来の売却を見据えても悪くない選択肢です。ただし新車以上に「どこで買うか」「何を確認するか」が重要になります。

探し方:ディーラーか個人売買か
- 認定中古車ディーラー:Toyota Sure(タイ全土に展開、3ヶ月〜2年の保証付き)、Honda Certifiedなどのメーカー系認定中古車のほか、Expat Auto(チェンマイ)のように外国人向けの英語対応・保証体系が充実した業者もあります。書類手続きの多くを代行してくれるため、初めての中古車購入では安心感があります
- 個人売買:Facebookの地域コミュニティグループが最も活発な流通経路です。価格交渉の余地は大きいものの、書類の準備や検品はすべて自己責任になります
購入前に必ず確認すべきこと
- ブルーブック(車検証)の有無:ブルーブックのない車両には絶対に手を出さないこと。所有権や来歴が不透明な車である可能性が高いです
- 強制保険(ポーロ―ボー)・税シールの有効期限
- 事故歴・水没歴:メーターの改ざんや水没車の外装だけの補修は、素人には見抜きにくいのが実情です。5,000バーツ前後で依頼できる第三者インスペクション業者の利用を強くおすすめします
- ローン残債の有無:売主がまだローンを完済していない車は、金融会社の同意なしに名義変更できません。事前に完済済みかを確認しましょう
名義変更(陸運局での手続き)

中古車の場合、購入後に陸運局(DLT)で名義変更の届出が必要です。売買契約から15日以内という期限があり、超過すると最低200バーツの罰金が科されます。同一県内での取引なら当日〜数時間で完了しますが、県をまたぐ場合は数日かかることもあります。
個人売買で必要になる主な書類は次の通りです。
- 元の車検証(ブルーブック)原本
- 前所有者の身分証明書の写し
- 買主(自分)のパスポート写しと住所証明書
- 双方署名済みの譲渡(名義変更)申請書・売買契約書
- 代理人に依頼する場合は委任状
名義変更の費用は、基本料金105バーツに加えて、評価額1バーツにつき0.005バーツが上乗せされる仕組みです(例:評価額50万バーツの車なら、基本料金と合わせて2,600バーツ前後が目安)。
中古車ローンを利用する場合
中古車でもローンを組むことは可能です。一般的に求められる必要書類は次の5点です。
- 有効なパスポート(顔写真ページ+ビザページの写し)
- 有効なワークパーミット
- 直近3ヶ月分の給与明細(または給与振込の記録)
- 過去6ヶ月分の預金残高証明書
- タイ人保証人の国民IDカードの署名入り写し
新車ローンと同様、最大の課題は「5番目のタイ人保証人」を確保できるかどうかです。見つからない場合は保証人不要のローン先を探す必要があります。
VAT(付加価値税)に関する注意
認定中古車ディーラーからの購入や、ローンを利用する場合は7%のVATが課税されるケースがあります。一方、法人登録されていない個人の売主から現金で直接購入する場合は、VATの対象外となるケースもあります。金額に影響するポイントなので、契約前に価格の内訳を確認しておきましょう。
購入後に必要な保険
新車・中古車を問わず、タイでは以下の2種類の保険を理解しておく必要があります。
- 強制保険(ポーロ―ボー / Compulsory Third Party):全車両に加入義務があり、毎年の税更新にも必須です。ただし補償内容は対人賠償の一部などに限られ、十分とは言えません
- 任意保険:タイプ1(車両保険・盗難・自然災害・火災・対人対物まで幅広くカバーするフルカバー型)、タイプ2/2+(中間タイプ)、タイプ3(対人対物賠償のみの基本タイプ)から選べます。中古車であれば、コストとカバー範囲のバランスが取れたタイプ2+(年間6,000バーツ程度〜)が現実的な選択肢になることが多いです
3パターン比較早見表
| 項目 | ①新車・一括払い | ②新車・ローン | ③中古車 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 車両代金全額 | 頭金20%前後〜(条件次第で5〜70%) | 車両価格+インスペクション代(約5,000バーツ) |
| 審査・保証人 | 不要 | タイ人保証人が基本必要 | ローン利用時のみタイ人保証人が必要 |
| 主な必要書類 | パスポート+住所証明書 | 上記+給与明細・預金残高証明・保証人書類 | 上記+ブルーブック・売買契約書・委任状等 |
| 納車までの期間 | 受注生産で最大半年 | 同左(審査期間が加算) | 即日〜数日(在庫車の場合) |
| 主なリスク | 為替・多額送金の管理 | 金利の実質負担(月利表示に注意) | 水没車・改ざん車・ローン残債のトラブル |
まとめ:購入前チェックリスト
- ノンイミグラントビザ以上の長期ビザを保有しているか
- 住所証明書をどのルート(イミグレ/大使館/勤務先)で取得するか決めたか
- ローン利用の場合、タイ人保証人のあてはあるか
- 提示された金利が「月利」か「年利」かを確認したか
- 中古車の場合、ブルーブックの有無とローン残債の有無を確認したか
- 第三者インスペクションの利用を検討したか
- 強制保険に加え、任意保険のタイプを選定したか
タイでの車購入は、書類さえ揃えれば外国人にとっても決して難しい手続きではありません。ただし「保証人」「金利の表示方法」「中古車の状態確認」といった落とし穴は日本での感覚と異なる部分も多いため、本記事のチェックリストを参考に、焦らず一つずつ手続きを進めてみてください。
免責事項
本記事は2026年9月時点で確認できた情報をもとに作成した一般的な参考情報であり、法律・税務・金融に関する専門的助言を目的としたものではありません。ビザの区分、必要書類、頭金・金利などのローン条件、税額や手数料、名義変更の運用は、法令改正や各機関(イミグレーション、陸運局、大使館、金融機関、ディーラー)の窓口・時期によって変更される場合があります。実際に車を購入される際は、必ず該当機関や金融機関、必要に応じて弁護士・会計士などの専門家に最新の情報をご確認のうえ、ご自身の判断と責任で手続きを進めてください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
