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タイ東北部コンケンの寺で午前4時に庫裏の扉を叩いた女、住職が恐れているのは暴力ではなかった

タイ・コンケンの寺で午前4時に庫裏の扉を叩いた女、住職が恐れているのは暴力ではなかった
画像:イメージ

午前4時、寺の庫裏の扉が叩かれた。外に立っていたのは、見知らぬ女だった。タイ東北部コンケン県、コンケン市自治体カンサダーン地区にあるワット・パー・アドゥンヤーラームで起きた出来事である。

扉を叩かれた住職のプラクルー・アドゥンサーラニテート師は、開けなかった。深夜でも早朝でもない、僧侶が起き出す直前の時間帯。相手が何者で、何の用があるのかもわからない。そのまま応じなかったことが、結果として賢明な判断だったと本人は考えている。

「いちばん心配しているのは、ブラックメールだ」

住職が語った不安は、身の危険についてではなかった。

「いちばん心配しているのは、ブラックメールによって名誉と戒律が汚されることのほうだ」

暴力を振るわれることよりも、僧侶としての名誉を傷つけられ、戒律違反を疑われる状況に追い込まれることを恐れている、という意味である。

タイの上座部仏教の戒律では、僧侶が女性と二人きりになることや、身体的な接触を持つことが厳しく戒められている。もし扉を開け、その場面を第三者に撮影されていたらどうなったか。写真一枚で、長年築いた信頼が崩れることを住職は知っている。

「どこにも行かない」

寺の周辺では、この一件を受けて監視の強化が始まった。住職自身は、寺を移るという選択肢を明確に否定している。「絶対にどこにも行かない」「死ぬことは恐れていない」と語り、単独での托鉢や招請への対応を控えつつ、身辺への警戒を強めているという。

住職の姉も、弟の身を強く案じているとされる。「もう手放してはどうか」「寺を必要としている人に任せてもよいのではないか」という趣旨の思いを口にしていると伝えられており、家族としての心配がにじむ。

タイのSNS上では、「深夜に女性が僧房を訪ねること自体が不自然だ」「寺の資産や後継をめぐる争いが背景にあるのではないか」といった趣旨の推測が飛び交った。一方で、「開けなかった住職の判断が正しい」と評価する趣旨の書き込みも目立った。

寺をめぐる「見えない争い」

タイでは、有名寺院の住職をめぐるスキャンダルが定期的に報じられる。女性関係を撮影して脅す、あるいは金銭を要求するといった手口は、繰り返し表面化してきた。今回の一件が実際にそうした企てだったのかは、まだ何も確認されていない。

ただ、住職が真っ先に「ブラックメール」という言葉を口にしたという事実そのものが、タイの僧侶が置かれている環境を物語っている。

午前4時に扉を叩いた女性が誰だったのかは、いまも明らかになっていない。寺は今日も、扉を閉めたまま朝を迎えている。

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