
タイ東部チョンブリー県シーラーチャー郡の路肩に停められた乗用車の中で8月8日、44歳の女性が遺体で見つかった。車内からは家族へのメッセージがつづられた遺書が見つかり、職場での横領疑惑をめぐるトラブルに追い詰められていた様子が明らかになった。
発見されたのは8月8日午前11時ごろ。チョンブリー県シーラーチャー郡バーンプラ地区のコーカオバーンプラ通り、バーンプラ貯水池付近の路上で、ホンダHR-V(グレーがかった銀色)がフットパスに寄せて停車しているのが見つかった。車内の運転席には女性が体を左に傾けた状態で座ったまま息絶えており、後部座席には木炭こんろが置かれていた。警察は死後7時間以上が経過しているとみている。
塗装業の男性が異変に気づくまで
最初に異変に気づいたのは、近くで塗装業を営む男性だった。「深夜1時ごろ、食事をしに外へ出たときにはもう車が停まっていた。朝起きたときもエンジンをかけたまま同じ場所にいたが、気にも留めなかった」と男性は振り返る。ところが正午が近づいても車が動く気配がないことを不審に思い、近づいて確認したという。
「車を揺すっても女性は目を覚まさなかった。ちょうどドアが開いたので開けてみると、すでに体が硬くなっていた」と男性は証言する。男性はすぐに周囲の住民に知らせ、警察と救急に通報した。現場に駆けつけたシーラーチャー警察署の捜査担当ナッタポン・カンパナート警部補らが検視を行った。
遺書に記された「会社に濡れ衣を着せられた」という訴え
女性はラヨーン県内の自動車関連会社に勤める会社員で、鞄の中からは複数の睡眠薬とともに、家族への長いメッセージがつづられたノートが見つかった。ノートには母親や妹、姪、甥への感謝と別れの言葉が並び、「会社での横領疑惑」への強い抵抗の言葉も記されていた。
「仕事は本当にきつかった。誠実に仕事をしてきたのに横領疑惑で訴えられ、事件、事件と繰り返された。おかしくなりそうだった」という趣旨の記述があり、「異動した先でも変わった人に当たり、辞めることもできず、収入がなくなれば家族が壊れる」といった追い詰められた心情が細かくつづられていたという。捜査関係者は「職場での人間関係と経済的なプレッシャーが重なっていたとみられる」と話す。
体に外傷なし、自殺の可能性で捜査
遺体には目立った外傷はなく、警察は自殺の可能性が高いとみて捜査している。今後、遺族への聞き取りを行い、事件性の有無を最終的に確認する方針だ。
職場でのハラスメントや過度な業務プレッシャーが人の命を奪う構図は、タイに限らずどの国にも通じる普遍的な問題だ。今回の一件は、遠く離れたラヨーンの職場から始まった苦悩が、シーラーチャーの路肩に停まった一台の車の中で終わりを迎えたことを物語っている。