店の奥の部屋には、16歳が3人と17歳が1人。タイ中部ナコンサワン県ムアン郡ノンプリン村のカラオケ店で、人身売買対策の捜査当局がおとり捜査に踏み込み、未成年の少女4人を保護した。逮捕されたのは、店を仕切っていた46歳の女性店主だった。
摘発が行われたのは2026年8月26日。タイ警察の人身取引対策部門(PMCC)が、国際的な児童保護団体「インターナショナル・プロテクション・アライアンス」と連携し、客を装った捜査員を店に入れる形で証拠を固めた。
逮捕されたのはウディーさん(46、通称ペーン)。店の所有者兼経営者で、女性たちの管理、部屋の割り振り、料金の徴収まで一手に握っていたとされる。
1回2000バーツ、店の取り分は500バーツ
捜査当局によると、店は18歳未満の少女に客を取らせ、1回あたり2000バーツ(約9000円)で斡旋。うち500バーツを手数料として店側が抜いていたという。
「未成年であることを承知のうえで、部屋まで用意していた。悪質性は高い」。捜査関係者はそう述べた。少女たちは店舗に併設された部屋で寝起きしており、外出も自由にはできなかったとみられる。
保護された4人はいずれも、児童福祉の担当機関に引き渡された。当局は、少女たちがどのような経緯で店に入ることになったのか、仲介者や紹介者の存在についても調べを進めている。
「知らなかった」という近隣の声
店は村の外れにあり、看板も目立たなかった。近隣住民の一人は「普通のカラオケ店だと思っていた。夜に車が停まっているのは見ていたが、まさか中に高校生くらいの子がいたとは」と話した。
別の住民は「地元の子ではないと思う。見かけない顔だった」と証言している。当局は、少女たちが県外から連れてこられた可能性を含めて確認を進めている。
SNSでは、厳罰を求める声が相次いだ。「2000バーツで子どもの人生を売ったのか」「店主だけでなく、客も全員捕まえてほしい」「田舎のカラオケ店は昔からこういう話が絶えない。ちゃんと調べてほしい」といった趣旨の書き込みが、フェイスブックやX上に並んだ。
タイでは、地方のカラオケ店やマッサージ店を舞台にした未成年の性的搾取が長年の課題となってきた。近年は国際NGOと警察が協働するケースが増え、おとり捜査による摘発も相次いでいる。一方で、貧困や家庭の事情から自ら店に入る少女も少なくなく、保護後の生活再建までを支える仕組みは十分とは言えない。
店を閉めるのは1日で済む。だが、4人の少女がそこにたどり着いた理由を閉じるには、もっと長い時間がかかる。