
タイの外食業界で過熱する一方の値下げ合戦に、業界大手が待ったをかけた。タイ式火鍋(タイスキ)チェーン大手のラッキースキー経営陣が、行き過ぎた価格競争を見直し、持続可能な成長路線への転換を業界全体に呼びかけている。
「安売り合戦では誰も生き残れない」
ラッキースキーの経営幹部は業界関係者との会合で、「短期的な集客を狙った過度な値下げ競争は、結局のところ業界全体の収益力を蝕む。持続可能な成長と、身の丈にあった適正なプロモーションを重視すべきだ」と訴えた。バンコクを中心に外食チェーン各社が値引きクーポンや割引キャンペーンを競い合う中、原材料価格や人件費の高騰で利益率が圧迫されているとの危機感がにじむ発言だ。
タイの外食市場では近年、SNS上のグルメインフルエンサーによる拡散効果を狙い、初回半額や食べ放題の期間限定値下げといった攻めの販促が相次いでいる。ラッキースキーの経営陣は「短期的な話題づくりのための値引きは、ブランドの価値そのものを損ないかねない」と指摘した。
「スマートな成長」へ舵を切る狙い
経営陣が掲げるのは「スマートグロース」というキーワードだ。単純な値引き合戦ではなく、メニュー開発や店舗体験の質を高めることで顧客単価と満足度を同時に引き上げる戦略への転換を目指すという。具体的には、原材料の産地にこだわった新メニューの投入や、店舗の内装刷新などが検討されているとみられる。
業界関係者の一人は「値下げ疲れは業界全体の共通認識になりつつある。大手が率先して声を上げたことの意味は大きい」と評価する一方、「実際にどこまで足並みがそろうかは未知数」と冷静な見方も示した。
SNSでは「値上げの布石では」との見方も
この呼びかけがニュースになると、SNS上では「結局は値上げの言い訳ではないか」「消費者にとっては値下げ競争のほうがありがたい」といった懐疑的な趣旨の投稿が一定数見られた一方、「安さだけを追い求めた結果、味やサービスが落ちるくらいなら適正価格のほうがいい」と理解を示す声も上がっていたという。
タイの外食市場は人口減少や物価高の逆風を受けながらも、観光客の回復需要で底堅さを保っている。値下げ競争から品質競争へと軸足を移せるかどうかは、今後の業界地図を左右する分水嶺になりそうだ。