
中東情勢の緊張で世界のエネルギー価格が跳ね上がっている。液化天然ガス(LNG)の価格は60%近く急騰した。それでもタイ政府は、国内のガソリン小売価格を動かさない構えだ。
備蓄は101日分
エネルギー省は世界のエネルギー市場を注視しているとしたうえで、タイには101日分の石油備蓄があると明言した。供給面での不安はない、というメッセージである。
価格面では、石油基金(オイルファンド)を使って小売価格を抑え込む方針を示した。基金が値上がり分を吸収することで、家計への打撃を和らげる仕組みだ。同時に、タイ湾の天然ガス生産量を増やし、再生可能エネルギーとラオスからの電力購入を拡大することで、燃料構成の中でLNG依存度を下げる作業も進めている。
それでも生活実感は厳しい
ただし、基金による価格抑制には限界がある。基金は無尽蔵ではなく、抑制期間が長引けば財政負担として跳ね返る。過去にも、原油高局面で基金が大幅な赤字に陥り、後の値上げでそのツケを払う構図が繰り返されてきた。
すでにタイ経済への影響は数字に出ている。第2四半期のタイ経済は減速し、エネルギー高が観光需要を押し下げたと分析されている。旅行費用の上昇は、国内旅行と海外旅行の双方でブレーキとして働く。
ガソリン価格の実勢
8月1日時点の店頭価格は、ガソホール系が1リットルあたり30バーツ台前半から40バーツ台後半のレンジ、ディーゼル系は27〜37バーツ前後で推移している。PTTは自社給油サービスの対象を全国204カ所へ拡大し、8月中は専用アプリ経由で1リットルあたり1バーツ引きのキャンペーンを実施する。
企業側の販促と政府の価格抑制が重なることで、当面の店頭価格は落ち着いて見えるはずだ。だが、抑え込んでいるのは値段であって、コストそのものではない。
タイに暮らす日本人にとっても、燃料価格は物流費を通じて食品や日用品の値札に直結する。据え置きの裏で誰が請求書を抱えているのか、そこを見ておく必要がある。