国際エネルギー機関(IEA)が公表した最新の年次報告書「グローバルEVアウトルック2026」で、タイの電気自動車(EV)市場が世界的な販売鈍化の逆風の中でも急拡大を続けていることが明らかになった。
報告書によると、2025年のタイ国内における電気乗用車の販売台数は前年比70%増となり、約14万台に達した。これは新車販売全体のおよそ4分の1を占める水準で、タイは東南アジア域内で第2位のEV市場となった。世界全体では今年上半期(1~6月)の新車販売が前年同期比で約5%減少しており、中国と米国という二大市場が経済的な逆風や関税政策の変化に直面する中で、タイ市場の伸びは際立っている。
特筆すべきは国内生産の拡大だ。2025年にタイ国内で生産されたEVが国内市場に占める割合は約20%に達し、前年の約5%から大きく伸びた。タイ政府は近年、国内向け販売よりも輸出を優遇する形で産業政策を見直しており、中国メーカーの輸出攻勢に対抗する形で、タイを東南アジアにおけるEV輸出拠点として育成する方針を鮮明にしている。輸出目標は2025年の1万2500台から、2026年には5万2000台へと大幅に引き上げられた。
タイは長年、日系メーカーを中心とした「東南アジアのデトロイト」として自動車産業を発展させてきたが、EVシフトの波の中で中国メーカーの存在感が急速に高まっている。BYDや長城汽車(グレートウォール・モーターズ)など中国系メーカーがタイ国内での生産拠点整備を進める一方、タイ政府は「EV3.5」など複数の優遇政策を通じて、国内組立比率の向上や部品産業の育成を図ってきた。
業界関係者は「タイが東南アジアのEVハブとしての地位を固めつつあるのは間違いない。ただし中国メーカー主導の構図が続く中で、タイ国内の既存自動車産業、とりわけ従来のガソリン車部品メーカーがどう生き残るかが今後の課題だ」と指摘する。世界的なEV市場の先行き不透明感が語られる中、タイ市場の堅調さは東南アジアの自動車産業地図を塗り替えつつある。